「1億総メディア社会」を生き抜く必修知識とは なぜ「メディアリテラシー教育」が重要なのか

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政治とメディアに詳しい上智大学の前嶋氏が、メディアをとりまく構造的変化とメディアリテラシー教育の意義について解説します(写真:タカス/PIXTA)
ソーシャルメディアが急速に普及した今、メディア情報を読みとくことが難しくなっている。政治とメディアに詳しい上智大学の前嶋和弘氏が、メディアをとりまく構造的変化とメディアリテラシー教育の意義について解説する。

「ゲートキーパー」不在の時代

メディアからの情報の意味を読みとくことは難しい。一方で、メディア情報を読みとく能力であるメディアリテラシーが、これほど重要になっている時代は過去にない。

ではなぜ、メディア情報を読みとくのが難しくなっているのだろう。そこには構造的な問題がある。まずこれまで情報選別をしてくれていた新聞の「情報のゲートキーパー(門番)」としての機能が圧倒的に弱くなってしまっていることが大きい。

ついこの間まで、私たちは新聞の黄金期を長い間経験してきた。多くの人たちにとって新聞を1紙しっかり読んでいれば情報は問題がなかった。新聞にはしっかり選別されたニュースが並んでいたためだ。とくダネも光っていた。

新聞は全国紙に限らず、ブロック紙でも地元紙でも共同通信や時事通信の全国ニュースで補われているため、情報のバランスも悪くなかった。新聞のライバルであるNHKも情報を漏れなく伝え、7時か9時の定時ニュースだけ見ていれば大丈夫のような気がした。

しかし、インターネットの爆発的な普及で情報環境は一変した。瞬時で膨大な情報が流れる中、世界の動きが早くなった。新聞は「昨日のニュース」のまとめになってしまった。

かつては政治家や官僚、産業界のトップなどに限られていた情報の発信者の数もネット時代には一般の人々を含めて一気に増えている。しっかり選別されたニュースを並べるという構造が崩れてしまった。新聞のゲートキーパー機能が揺れ、必要な情報の提供漏れが多くなってしまう。

これは悪循環でしかない。購読者減で新聞社の費用も潤沢でなくなる。取材網は減り、人も減り、予算も減る中、とくダネは減る。数年前に比べて顕著なのは、各新聞社が速報を自社サイトやヤフーへの情報提供に譲り、特集に力を入れていることだ。何度も繰り返して読まれる特集が新聞社の売りになりつつある。

新聞が「日刊の雑誌」に変わりつつある。特集でも情報は選別する。しかし、新聞社が特集に集中すればするほど、ゲートキーパー機能は弱くなる。特集のために複数の新聞を購読する層は多くない。

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