アクセルペダルを深く踏み込み、回転上限であるレブリミット付近まで上昇するとシフトアップしたかのようにエンジン回転をスッと落としつつ、すぐさま次のギヤ段で加速するように淀みなく吹き上がる。フィットe:HEVから導入されているこの制御は、シビックe:HEVの新エンジン向けに最適化された。
クローズドコースだったので景気よくアクセルを深く踏み込んでみた。すると、エンジン回転は速度やアクセル操作に合わせて上下するが、踏み込んでいる以上、加速力は一切途切れない。なぜこんな手の込んだことをするのか。開発を担当した技術者に伺った。
「e:HEVには、エンジンとタイヤを直結させたエンジン走行モードがありますが、これは主に高速クルージング時に限られます。よって多くの走行シーンではエンジンは発電に徹し、走行用モーターで駆動力を生み出しています」と、改めてe:HEVの基本制御を説明する。
「エンジンがただ唸るだけでは楽しくない」に応えて
そのうえで、「従来、加速時は特定の高回転域にエンジン回転を固定させたままでしたが、せっかくエンジンを搭載しているのに、ただ唸っているだけで楽しくないという声をいただいていました」と、改善のきっかけを紹介してくれた。
「そこでわれわれは、これまで慣れ親しんだ加速時にエンジン回転が変速を伴って上下する、リズミカルで爽快なエンジン音が生み出せるよう、発電制御システムに改良を加え、加速時の演出に素のエンジン音を活用しました」という。
新規開発のエンジンは澄んだエンジン音を聞かせてくれる。ハイブリッドシステムだから車両負荷やバッテリー残量に応じてエンジンが頻繁に停止/始動するが、その始動時から心地よい快音を聴かせる。
また、ホンダとして初採用の「パワーメーター」で、こうしたシステム制御の視覚化にも取り組んだ。エンジン音やパワーメーターの動きを含め、走行シーンの様子は筆者のYouTubeチャンネル「西村直人の乗り物見聞録」へ動画を配信している。
シビックe:HEVがもたらす爽快感の創出は、エンジン本体やe:HEVシステムの制御だけに留まらない。ドライバーや同乗者の耳に届く音にもこだわった。その一例がANC(アクティブノイズコントロール)と、ASC(アクティブサウンドコントロール)だ。
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