日本人の遺伝子が酒に弱く「進化」した納得の理由 コメを食べてきた日本人の腸に起こった変化
飲んだアルコールは肝臓で分解されてアセトアルデヒドという有害物質に変わりますが、酒に弱い人はアセトアルデヒドを分解する酵素を作る力が低いため、アセトアルデヒドが体に長くたまります。
水田は実りをもたらす一方で、古い時代にはさまざまな病原体の温床となりました。たとえば、肝臓に重い障害が起きる日本住血吸虫症(にほんじゅうけつきゅうちゅうしょう)は、水田や湿地に暮らすミヤイリガイという小さな貝が媒介します。貝の中で増えた日本住血吸虫の幼虫は水温が上がると水中に泳ぎ出し、素足で水田に入った人の皮膚から侵入します。
高熱を繰り返すマラリアも同様です。マラリアを媒介するハマダラカの幼虫も水田や湿地で暮らし、成虫が人から吸血する際にマラリアの病原体が人の体に入ります。酒に弱い日本人は有害物質アセトアルデヒドが血液に多くとけているため、侵入した病原体が活発に活動できない可能性があります。その結果、酒に弱いほうが生きのびやすかったのではないかという説が提唱されています。
コメが日本人の遺伝子を大きく変えた
水田が広がる日本では、古代から近代までマラリアが全国で頻繁に発生しました。『源氏物語』には、主人公である光源氏がマラリアと思われる病気をわずらう記述が出てきます。近代に入ると住まい周辺の環境が整備され、土地の改良と殺虫剤の使用が進みました。
これによりマラリアは次第に減少し、昭和10年ごろには「マラリア5県」に集中して発生するようになりました。次のページの図の上の地図に示すように、日本海に面する北陸から太平洋側の愛知県まで本州の真ん中あたりを横断する地域です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら