日本人の遺伝子が酒に弱く「進化」した納得の理由 コメを食べてきた日本人の腸に起こった変化

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コメを育て、コメを食べてきた日本人の体内では腸内細菌も変化したようです。人の腸には人種を問わず約1000種類の腸内細菌が100兆個も存在し、日本人に限ると、腸内細菌は合わせて約500万個の遺伝子を持つと報告されています。

日本を含めた12カ国の人から腸内細菌を採取して、遺伝子をもとに腸内環境を比較した研究によると、腸内細菌の遺伝子全体の約半分が日本人に特有であることがわかりました。わかりやすくいうと、日本人の腸にしかいない細菌が全体の半数近くを占めているということです。

日本人の腸はビフィズス菌など善玉菌が多い

これを海外の人から得られたデータと比較したところ、日本人の腸にはビフィズス菌をはじめとする善玉菌が多く、穀物に含まれる炭水化物や、アミノ酸をむだなく利用するのに役立つ細菌も多数いることが明らかになりました。そのおかげで穀物からエネルギーをしっかり取り出すことができます。

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穀物に含まれるでんぷんを消化するのも得意です。でんぷんを消化するアミラーゼという酵素をどれだけ作れるかは、アミラーゼを作るよう指令を出すアミラーゼ遺伝子の数で決まります。アミラーゼ遺伝子はゲノムのなかにコピーがいくつかあって一斉に指令を出すため、コピーの数が多いほどアミラーゼがたくさんできるわけです。

食事に占めるでんぷんの割合と、唾液に含まれるアミラーゼ遺伝子のコピー数を世界各地で比較した研究によれば、日本人をはじめ、でんぷん摂取量の多い地域の人は、狩猟や牧畜に依存して穀物をほとんど食べない各地の先住民とくらべてアミラーゼ遺伝子のコピー数が多く、コピーを6個以上持つ人の割合がほぼ2倍高かったそうです。

面白いことに、この変化は犬でも起きています。オオカミが家畜化されて犬になる過程で、膵臓でアミラーゼを作るよう指令を出す遺伝子のコピー数が平均で7.4倍増えたという報告があります。でんぷんを消化する力が高まったおかげで、犬は人が残した穀物を食べられるようになったのです。

奥田 昌子 内科医

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おくだ まさこ / Masako Okuda

愛知県出身。京都大学大学院医学研究科修了。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で30万人以上の診察にあたる。現在は産業医を兼務し、ストレス対応を含む総合診療を続けている。著書に『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』(講談社ブルーバックス)、『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎新書)、『日本人の病気と食の歴史』(ベスト新書)、『なぜ、健康法は「効かない」のか?』(だいわ文庫)などがある。

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