日本人の遺伝子が酒に弱く「進化」した納得の理由 コメを食べてきた日本人の腸に起こった変化

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日本人の遺伝子が持つ特徴とは(写真:maroke/PIXTA)
がん、糖尿病、認知症、高血圧、肥満など、さまざまな病気のリスクや体質は「遺伝的なものだし仕方ない」と思っていませんか。しかし、近年のゲノム生物学の進歩によって、生活習慣や環境で遺伝子の働きが変わり、実際に病気になるかどうかも変わることが明らかになってきています。
日本人の遺伝子と体質の特徴を知ると、どうすれば遺伝的なリスクを抑え健康に過ごせるかが見えてきます。日本人の「遺伝子」と「体質」にはどんな特徴があるのか、医師・医学博士の奥田昌子さんの著書『日本人の「遺伝子」からみた病気になりにくい体質のつくりかた』から日本人とお酒にまつわるエピソードをご紹介します。

酒に弱いほうが生存に有利だった?

一人ひとりの体の設計図、すなわちゲノムは、わずか0.1%しか違わないと報告されています。けれども、よくみればDNAが1文字だけ異なる一塩基多型(SNP)をはじめ、細かな違いが無数にあって、SNP1個で体質ががらりと変わることもあります。では、日本人のゲノムにはどんな特徴があり、その特徴はどのように作られてきたのでしょうか。

2020年に興味深い論文が公表されました。日本人17万人のゲノムをもちい、遺伝子変異が起きた時期と、それがどのように伝わってきたのかをコンピューターを駆使して探索したものです。すると、過去1万〜2万年のあいだに変異が起きた遺伝子のうち、29個が世代をへるごとにそれぞれ一定の方向に体の特性を変化させてきたことがわかりました。

このなかでもっとも強い動きが「酒に弱くなる方向への進化」でした。飲めるようになるならともかく、飲めなくなるなんて進化といえるのかと思った人がいるかもしれませんが、ここでいう「進化」は日常会話で使う「進化」とは意味が異なります。

専門用語では適応進化といい、生存に有利な特性を獲得することを指します。つまり、日本人は酒に弱いほうが生存に有利だったということです。いったい、なぜでしょうか。

稲作は7000〜8000年前に、現在の中国を流れる長江が東シナ海にそそぐ地域で始まったと考えられています。じつは、ここは酒に弱い人の割合がもっとも高い地域でもあるのです。次のページに掲載する図の2枚の地図をくらべてみてください。

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