「腹式呼吸=健康」と盲信する人に欠けている視点 「胸式呼吸が悪い呼吸」という理解は間違い
これまで呼吸と姿勢の関係などについてお話ししてきました。ここで1つ、重大な事実をお伝えしたいと思います。実は……肺は、自分では動くことができません!
「え? 1日に2万回以上息を吸ったり吐いたりしてるのに、自分で動けないわけ?」と思われたでしょうか。ハイ、そうです。肺には筋肉がないので自分で動くことができず、近くにある筋肉に動かしてもらっています。
肺が呼吸運動を行う際に使う筋肉は、首から下腹部にかけて20以上もあります。このうち「横隔膜」と「肋間筋」の二大呼吸筋が代表して、肺の動きをコントロールする役割を担っています。それぞれについての詳細は後述しますが、ここではまず呼吸のシステムについて見ていきましょう。
呼吸をコントロールする仕組み
息を吸うときの主力選手は横隔膜です。ドーム状の形を収縮させて、肺を拡げて息を吸わせます。このとき働く力の7割は横隔膜、3割が肋間筋です。逆に息を吐くときは、横隔膜が収縮をやめ、肋間筋が胸郭を狭めるので、肺は自然に縮んで息が吐きだされます。
この2つの筋肉の面白いところは、内臓に接する場所にあるのに、腕や足の筋肉と同じように、意思の力で動かすことができるという点です。もちろん呼吸中枢の指令を受けて、ほとんど自動で動いてくれている部分がほとんどなので、眠っていても、意識がなくても呼吸が止まることはありません。
でも、せっかく自分で動かすことができるなら、それを利用しない手はないですよね。呼吸をコントロールすること、それは呼吸筋の動きをコントロールする、ということなのです。
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