米国はキューバを再び「属国」にできるか

かの国は、したたかな「赤いレアメタル大国」

早速、鉄鋼や特殊鋼の需要家に打診してみた。品質条件も問題ないので価格条件さえあえばトライアルで開発輸入をすることにした。キューバは発展途上国だから、輸入では特恵関税が適用されるので、通常44円の輸入税が26.4円に減免されるのだ。これがメリットだった。

ところがここからが問題だった。ニカロ鉱山はキューバ革命以前にアメリカ資本によって設立されたものである。それゆえアメリカ政府としてはニッケル取引に対しては特に敏感である。

日本だけがアメリカに「遠慮」している実態

実際「ヘルムズ・バートン法」という法律があり、キューバのニッケル資源が1キロでもアメリカに迂回輸出されることががあれば、日本の企業であってもペナルティーを課すことになっていた。

具体的にどう適用されるかと言うと、仮に日本の商社が日本市場にキューバのニッケル資源を輸入するとしよう。そのニッケルが自動車鋼板に使用され、その自動車がアメリカに輸出された時には、自動車メーカーがアメリカからペナルティーを課せられるという意地の悪い法律なのである。

欧州各国でも問題は日本と同じなのだが、各国は形式的にキューバから直接輸入はせず、カナダで積み替えオランダのロッテルダム港に荷揚げしていた。つまり各国は原産地をカナダにして、アメリカに気兼ねすることなく堂々と輸入していた。

私から言わせれば、日本という国は何でもアメリカに遠慮して、なぜか生真面目に自主規制しているようだった。確かにニカロ鉱山はアメリカ資本(ウェスタンレッド社)時代の工場だが、他の工場はキューバが自主開発しており、アメリカ資本とは何の関係もないにもかかわわらず、だ。ここらへんがアメリカに忠義立てしている日本が「忠犬ハチ公」といわれるゆえんだが、まさに滑稽ではある。

さて、実はこのヘルムズ・バートン法などを巡っては毎年、国連で決議が行われるの恒例の行事となっている。「米国の対キューバ経済封鎖解除決議結果」(2014年10月28日の第69回国連総会)を引用すると、「米国の対キューバ経済・通商・金融禁輸措置を解除する必要性」が、「賛成188カ国、反対2カ国(米国、イスラエル)、棄権3カ国(マーシャル諸島、ミクロネシア、パラオ)」という圧倒的大差で決議採択されている。

何と国連加盟国193カ国のうち約97%がキューバの意見に賛成したことになり、すでに誰がみてもヘルムズ・バートン法が国際的に悪法であることが証明されている。

米国の不当ないわゆる「対キューバ経済封鎖」政策は、23年連続して国際社会の圧倒的な意見で解除が要求されてきたが米国内では対キューバ経済封鎖が、国連憲章、国際法、民族自決権、内部問題不干渉、国内政策の域外適用、自由貿易に反するものとして認識はされていない。キューバ政府は、1962年からの50年以上にわたる経済封鎖による累積損害は、ドルの対金価格減価分を考慮すると、1兆1573億ドル(2013年4月まで)に達するとしている。

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