私自身は、過去20年以上に渡り、キューバのレアメタル資源(ニッケルとコバルト)の開発輸入に努めてきた。キューバは付き合えば付き合うほど「味のある不思議な国」だが、まずはレアメタルの開発輸入の話から始めたい。
ニッケル、コバルト・・キューバはレアメタル大国だった!
当時すでに、私が在籍していた商社の同僚がサトウキビのパルプ化プロジェクトのためにキューバに長期出張をしていた。サトウキビの蕊(ズイ)の部分を除去すると良い紙ができるので、木材資源が不足しているキューバに、日本の製紙技術の導入を模索していたのだ。
同僚はすでに水族館で使うアクリル・プレートの輸出業務などでキューバの貿易公団とも友好な関係を構築していたのだが、キューバは米国からの経済制裁を受けているため、輸出決済条件が悪化しつつあり、常にデフォルトの危険があったようだ。
そこで、1995年当時、同僚から相談を受けたのがキューバのレアメタル資源の開発だった。ニッケルとコバルトだが、調べてみるとキューバはコバルト埋蔵量で世界第3位、ニッケル埋蔵量が第5 位だという。これを知ったときは信じられない思いで、「何が何でも日本向けに開発輸入しなければ」と勢い込んだものだ。
キューバでは、東端のニカロ鉱山(元はアメリカ資本が開発)、モアベイ鉱山、プンタゴルダ鉱山などにニッケル鉱山と精錬工場があるのだが、プラント輸出の見返りにニッケル資源をバーター取引とすれば対キューバの債権保全になるというアイデアである。
キューバ政府はニッケルやコバルトの生産量は原則的に発表していない。だが、カナダとの合弁会社であるシェリット社は自社製錬分としてニッケルが3万4572トン、コバルトが3854トン(2011年)と報告している。ちなみにキューバの国家としてのニッケル生産(計画)は6万2000トン程度(2013年)(そのうち推定生産能力はニカロ工場1万3000トン、プンタゴルダ工場3万トン)だと推測する。
話を戻すと、この時は、会社として、日本にはそのうちの5%~10%ほどは輸入したいと計画を立てた。世界のニッケル生産量は約200万トンだからキューバ産ニッケルのシェアは多くはない。
だが、埋蔵量から考えると今後の可能性は充分にあり将来が楽しみなのだ。その他の鉱物資源も、中央部山系であるトリニダー山地は、高度が低く多くの山地群で形成されており、同国が銅・マンガン・ニッケル・クロム・鉄鉱石・タングステンなど、地下資源が豊富に埋蔵している資源国であることを、今回を機にぜひ記憶にとどめていただきたい。
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