津田大介氏「今の若者はゼロイチで考えすぎ」 ”減点型社会”が若者を変えた?

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以前、ある大学でメディアリテラシーについて教えたときに、「ニュース報道が信じられず、ネットにしか真実がないと思っている」と話す学生がいました。今の子は、そんなふうに「1 or 0」な感じなんですよ。ネットでデマを流したやつがたたかれますけど、僕はデマとデマじゃないものの中間に真実があるんじゃないかと思っています。でも、そういう考え方ではなく、つねに「1か0」を求める子が増えているような気がします。

あと、その授業では、原発事故の報道がうまくいかなかった原因についても、僕が思うところを話しました。テレビやメディアは、わからないこともわかったように報道しますよね。でも、本来ならわからないときは、「自分たちもわからないけど、こうじゃないかなと思うところを報道しています」と伝えるべき。そうすれば、見ている側もその報道を信じるのではなく、自分で考えるはず。その方法がなかったから、原発事故の報道ってダメだったよね、という話をしたのです。

そうしたら、学生が「そんなわからないことを報道されても困る。わかったことだけ報道してくれ」って言うんですよ。要するに、自分で考えたくないっていうことの裏返しだと思うんですけどね。

原田:そうそう、知り合いの編集者が、「ホームランは打てないけど、打率2割7分くらいの若い編集者が増えている」と言っていました。似た話ですよね。

津田:わかります。同じような話ですね。でも、それは若者ではなく、社会が悪いのだと思います。結局、社会が減点型の評価しかしないし、数字とかコンプライアンスとか、いろいろと制約要因が社会に増えていますから。

何かをしようとするときに、結果を残してすでにある程度の地位にいる人だったら突き通せばいいけど、若者がやったら許さない社会や会社環境になってるじゃないですか。それはもう2割7分になるのは仕方ないのではと思いますね。

今の子はみんな、社会をシビアに見ています。どんなに偏差値の低い学生も、65歳で年金がもらえるなんて信じていないでしょう。このままだと日本は沈んでいく一方だとわかっているはずです。デフォルトとしてあきらめがある。その中でなんとかしなきゃいけないし、仕方がないよねって受け入れていくこともしなければいけない。僕らが学生だった頃は、日本がこんなに沈むなんて思っていなかったし、そんな問いすらありませんでしたからね。

原田:津田さんは団塊ジュニア。僕はポスト団塊ジュニア。僕らはずっと景気がいい中で育ってきて、就職活動時にハシゴを外された世代でしたよね。

津田:でも、未来が不安だからといって、将来の夢が公務員とか、安定して高収入がいいとか、家賃収入で暮らしたいとか、まったく夢のない展望を中学生から聞かされると、ちょっといろいろ考えちゃいますね。

原田:公務員が悪いわけではないですが、一流大学の学生の間でも公務員志向が高まっていますね。

(構成:佐藤ちひろ)

※この対談の後編は1月18日(日)に公開します

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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