浦安市は不妊治療の支援まで踏み込む 全国一若い自治体の挑戦(後編)

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松崎:出産適齢期っていうのは18~26歳だということなんですね。ところが今、実際に女性の第一子の産む平均年齢がもう30歳。

話の発端は、順天堂大学医学部の体外受精の第一人者が浦安市民なんです。以前から市民ではあったのですが、7月1日に順天堂浦安病院に赴任した。それでぜひ浦安と手を組めないか、と。

まず前提として今、体外受精児って何人に1人だか知っていますか? なんと、27人に1人が体外受精児なんです。

坂之上:そうなんですか!

松崎:でしょ。これにびっくりしちゃってね。2002年は74人に1人だった。今、世界最大の体外受精国なんです。

体外受精の専門個人クリニックには、今、4万2000人の患者がいるんですって。1回の体外受精には最低100万円かかる。4万2000人っていうと420億円なんですよ。でも、実は大学の医学部があんまり体外受精やってこなかった。そのため一個人が経営しているクリニックに中には、それを食い物されているところもあるっていう話を聞いた。それがスタートなんです。これはひどいと思いましてね。

不妊治療にも力を入れる浦安市

不妊治療にも力を入れていきたい(撮影:今井康一)

坂之上:そうそうそう。不妊治療もそうですが、ものすごくお金がかかるんです。

松崎:しかも、母体にもだいぶ負担がかかってしまう。そこでプリンセス・バンク・センターとは何かというと、もともと菊地盤先生が考えたものなのです。若年女性がガンを宣告されると、子どもが産めない体になるって宣告と同じなんだって言うんです。なぜなら化学療法を3回やると死滅しちゃうんですってね、卵子と卵巣が。

坂之上:そうです、そうです。

松崎:で、その前に、治療前に卵子でも卵巣でも摘出をして冷凍保存しておく。そして、治療が終わったら元に戻すことで若年女性に希望を与えたいというのがスタートなんです。それを応用したらどうかと言うのが、プリンセス・バンク・センター構想です。

今は初婚がだいたい29、30歳なんだから、そのときには出産適齢期を過ぎちゃっているわけです。だから、できれば26歳までの間に自分が晩婚だとみたら、採卵して冷凍保存しようと。採卵は、大きな手術ではなく痛みを我慢すれば麻酔もいらないとのこと。また、病気ではなく、1日の安静ですぐに日常生活にもどれるので、市内ホテルと連携をとればいいと思っています。

でも本当に痛いのは保険がきかない事で、卵巣組織の凍結保存まですると100万円近くかかってしまうとのこと。保険の問題は国に話をしますが、うちの場合には大学と浦安市とホテルがタイアップして、まずはやっていく。もう来年には予算化して問題点の整理から始めます。

坂之上:えっできちゃうの? 

松崎:はい、まず一歩ですけれども。

坂之上:これはいろいろ課題がありそうですよね。倫理の問題とか。

松崎:でも自分の体に戻すんですよ、人にあげるんではなくて。もちろん、すべて大学の倫理委員会を通さなきゃダメなんです。

坂之上:これは元気な人、別にガンでなくてもできるんですか。

松崎:もちろんです。

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