寿命は100歳へ!理論物理学者が語る近未来 ミチオ・カク氏が語る未来世界(前編)

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サイバー革命は「シンギュラリティ」にともなって、約30年後にピークを迎える(写真:NHK)

人類の歴史を見てみると、いくつかの大きなターニングポイントがあります。書き文字の発明によって知識の爆発的な増加が生じましたし、約1万年前には農業が始まり、食糧供給が向上しました。300年ほど前には産業革命と機械化の時代が始まりました。そして今、私たちは次の大きな革命の時代に突入しています。それがサイバー革命です。サイバー革命は「シンギュラリティ」にともなって、約30年後にピークを迎えるでしょう。

「シンギュラリティ」が起こるということは、私たちは自由になるということです。別の人生を生きる選択、現代よりもずっと長く生きる選択、退屈で危険な仕事をしなくていいという選択、宇宙に飛び出す選択を持つ。私たちは解放され、自由が約束されるのです。

がんは風邪並みに!新しい医療の形が生まれる

医療技術が進歩して、今では、がんの正体が分子レベル、遺伝子レベルで解明されるようになってきています。将来、私たちは腫瘍ができる10年も前に、100個のがん細胞から成る、がんのコロニーを検知できるセンサーを持つようになるでしょう。つまり腫瘍になってからではなく、細胞レベルのうちに、がんを分析することができるし、遺伝子レベルでがんを特定して、遺伝子療法を行うことも可能になるのです。

さらに今は新しい形の医療、ナノ医療というものが生まれています。ナノ医療の分野では、今すでに、がん細胞をピンポイントで攻撃できる「ナノマシン」が開発されていて、臨床実験の段階まで来ています。

今日行われている、がんの化学療法は過酷なものです。毛は抜ける、皮膚は老いる、吐き気はするで、死にそうな気分になります。それは化学療法がショットガンみたいなもので、視界に入るものすべてを撃ち落してしまうからです。ですが、「ナノマシン」は知能のある爆弾で、個別のがん細胞を一つひとつ退治していきます。標的療法、免疫系を向上させる治療法で、がん研究の新時代を迎えています。

私はいずれ、がんが風邪と同じような扱いになると思っています。風邪はどうして撲滅できないかというと、原因であるライノウイルスが300以上あって撲滅するにはコストがかかりすぎるからです。がんも同様に、多種多様な遺伝子の変異が原因であるため撲滅はできないけれど、それによって死ぬこともなく、共存していくようになると思います。

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