本来であれば、ネイチャー誌に掲載された論文2本を撤回した7月2日時点で、STAP現象は白紙となり、存在するかどうか分からないもの、になったはずだった。だが、下村博文文部科学大臣の意向や、社会現象にまでなってしまったSTAPの存在を検証することが「一般社会や国民の関心に応える道」(理研・野依良治理事長)との方針をうけて、行われた。
かかった費用は所期の予算1300万円に小保方氏の監視付き実験室改装費用550万円を加え、実際にはおよそ1500万円となった。だが、最終的には大方の予想通りの結果となった。検証結果は、今後の研究に資するため、2015年3月までに論文にまとめて公表する予定という。
会見で、検証実験責任者の相澤慎一チームリーダー、直接実験を行った丹羽仁史副チームリーダーともに、「論文のプロトコルに沿って実験を行ったが、再現できなかった」という言い方をした。科学に疎い一般人には、何やら含みのある言い方のように聞こえるが、科学者が科学的に確信を持って言えるのはそこまでだということであり、「実はSTAPはある」といった含みはない。
簡単な方法であったはずのSTAP細胞が再現できず
「あるかどうかはわからないが、今回の検証実験では再現できなかった」というのがいちばん正確な表現だろう。「ない」ことを証明することは『悪魔の証明』と言われるように、ほとんど不可能に近い。すべての可能性を網羅したうえで否定しなければならないからだ。これに時間とコストをかけることは無駄な努力と言っていい。
そもそもSTAPは、「オレンジジュース程度の薄い酸に浸すだけで多能性を獲得できる簡単な方法」というのが当初の売りだったはず。これほどの長期間取り組んで再現できないものであれば、もしあったとしても実用化するためにたいへんな苦労をしなければならないことは目に見えている。それだけの時間と費用と人材を注ぎ込むべき研究なのか、という疑問も生じる。
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