新社長はヤマト創業100周年を託された ヤマトホールディングスが社長交代で若返り

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今後は遅効性のある値上げの本格寄与や、交渉完了率が半数程度に止まっている大手法人との交渉の本格化も予想される。消費増税に伴う反動減の影響も薄れ、物量数も徐々に回復すると見られる。

それでも課題は残る。まず、15年度後半に予定されている日本郵政(JP)の上場だ。宅急便市場はヤマトHD、JP、佐川急便を傘下に有するSGホールディングスの3社でシェア9割を占める。常日頃から「成長戦略に欠ける」と批判を受けるJPが、上場を機に攻勢をかけることも予想される。もうひとつは、業界の構造的な問題といえるドライバー不足だ。これは一時的な待遇改善で解決されるものではないだけに、中期的な課題ともいえる。

13年から稼働しているロジスティクス基地の羽田クロノゲート(撮影:尾形文繁)

こうした中、ヤマトHDはVN(バリュー・ネットワーキング)構想を掲げ、スピード仕分け・通関を行い、”止めない物流”を行う大規模拠点の設置を推進中だ。13年には羽田クロノゲート、厚木ゲートウェイが稼働し、今後は名古屋、大阪でもゲートウェイの新設を予定する。この構想は、宅急便のネットワークと倉庫機能、機器修理やメンテナンスなど様々な機能を結びつけるもので、成長戦略の中核をなす。

真面目に見えるが、実は”ファイター”

山内氏も「VN構想は、物流がコストではなく価値を生み出す手段であるということ。線路は敷かれているので、新しいサービスを加えていく。アグレッシブに進めていきたい」と話す。構想をいかに実際の収益につなげられるかが、次期トップとしての大きな責務だろう。

17日に会見を行った山内氏(写真左)と木川社長

会見で目標とする企業を尋ねられた際、山内氏は「小倉昌男が作ってきた、世の中が必要としているけれど、まだないサービスを実現できる企業を目指したい」と応えた。71年に2代目社長に就いた小倉昌男氏が、「宅急便開発要項」を社内で発表したのは75年の夏。そして76年1月20日に『宅急便』が誕生した。

「実直で真面目に見える一方、実はファイターでもある」(木川氏)と評される山内氏。いっそうの競争激化も予想される中、創業100周年を託された新社長は、世の中にまだない価値あるサービスを生み出すことができるのか。新体制は15年4月から始まる。

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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