押し寄せる取材の波、「生意気」とお叱り 『もしドラ』の著者が明かす②

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テレビというのは、ツボにはまったときの宣伝効果は大きいけれど、逆に消耗も激しいメディアである。そこでは、何より安全運転をすることが求められるのだ。テレビでは、以下のような教訓を得た。

「テレビ出演は安全運転で乗り切れ」

ネタがないと講演はこなせない

取材攻勢のあと、やってきたのは講演会ラッシュだった

さらに、それらの後に待っていたのが「講演会」ラッシュだった。ぼくはそれまで、講演会など一度もしたことがなかった。だから、それらの依頼が来たときは、ずいぶん緊張して引き受けた。そうして、最初の講演はなんとか乗り切ったのだが、2回目で大失敗をやらかしてしまった。会場の雰囲気に飲まれ、しどろもどろになったあげく、最後は数分間絶句してしまったのだ。

 そこでぼくは、講演というものの恐ろしさを知った。講演というのは、当たり前だが聴衆がいる。そして聴衆は、ちょっとでも話が面白くないと、とたんに白けた雰囲気を醸し出してくるのだ。無言のプレッシャーをかけてくるのである。

 そうしたときに、あらかじめ話す内容を決めていると、かえってドツボにハマってしまう。他の話に方向転換しようとしても、それが思い浮かばず、何もしゃべれなくなるのだ。だから、話す内容はあまりかっちりと決めない方がいい。単に方向性を決めるくらいにして、白けたらその場で方向転換できるよう、ゆとりを持って臨んだ方がいいのである。

 それが分かってからは、講演の前にいくつかの方向性を用意しておいて、会場の雰囲気を見ながら決めていく――というスタイルを採った。そうして、押し寄せてくる講演の波をなんとか乗り切ることができたのである。

 それにしても、これも初めて知ったのだが、ほとんど全ての講演で、話す内容は話者の手に委ねられている。事前の打ち合わせは滅多にしない。そのため、1時間以上にわたって話し続けられるネタがないと、とてもではないが乗り切れない。

 ぼくは、幸い話し好きで、また不遇の時代も長かったので、話すことなら山ほどあった。しかし、もし話すのが嫌いだったり、そうしたネタがなかったりしたら、その緊張には耐えられなかっただろう。講演は、話すのが好きなぼくでさえ、直前には毎度のどがカラカラに渇き、手に汗をぐっしょりとかいたくらいだ。それを嫌々続けていたら、確実に体を壊していたと思う。ぼくはそこで、以下のような教訓を得た。

「講演は、話す内容をきっちり決めない方がいい」

 最終回となる次回は、アニメ化や映画化など、マルチメディア展開の副作用についてご紹介したい。

撮影:相澤心也

岩崎 夏海 作家

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いわさき なつみ / Natsumi Iwasaki

1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著『部屋を活かせば人生が変わる』(累計3万部)などがある。

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