売れても生活レベルを上げてはいけない

『もしドラ』の著者が明かす③

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『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(以下『もしドラ』)が刊行されてから、今年で5年が経過した。その発想から企画、執筆、販売に至るまで、『もしドラ』制作の裏側をあますところなく書き記したドキュメンタリーである『「もしドラ」はなぜ売れたのか?』を、このたび東洋経済新報社から出すことになった。

 この連載では、本書では描かなかったベストセラーの実態――その強烈な「副作用」というものをご紹介していきたい。今回が最終回である。

接待に気疲れ

ベストセラー作家になることの一番の副作用は、「自分が偉くなった」と錯覚することだろう。とにかく、周囲の人たちが「先生、先生」と持ち上げてくる。つまらないことでも笑ってくれる。下から仰ぐようにぼくを見る。もしぼくが若かったら、それに完全に溺れていたことだろう。

 2011年は、よく講演を引き受けていた。その先で必ずといっていいほど言われたのが、「お忙しいところ(遠いところ)すみません!」という恐縮の挨拶だった。また、こちらがお金をもらっているのに、「来てくれてありがとうございます!」とありがたがられた。講演が終わればサイン会が開かれ、そこには毎度長い列ができた。多くの人がぼくの本を買い、その列に並んでくれたのだ。

 また、この頃までにアニメ化や映画化のオファーもいただくようになった。それも一つではなく複数の会社からだ。マンガ化やドラマ化のオファーも来た。そういうオファーをしてくる人たちは、会うと必ず美味しいものをごちそうしてくれた。中には六本木のクラブに連れて行ってくれた人もいた。そこでは若く美しい女性たちがぼくを歓待してくれた。『もしドラ』の作者だと紹介されると、大仰に驚き、喜んでくれた。

 そういうのを「楽しい」と思えるような性格だったら、ぼくの人生は完全に破綻していただろう。それに酔いしれ、溺れていたはずだ。しかしぼくは、幸か不幸か外食やクラブ遊びがあまり好きではなかった。それまでの生活では接待する側だったので、貧乏根性が染みついているからか、そういうお店に行くと恐縮し、どうしても気を遣ってしまうからだ。

 

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