売れても生活レベルを上げてはいけない 『もしドラ』の著者が明かす③

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そのため、かえって気疲れするくらいだった。だからぼくは、そういうお店に行くことを逆に「こちらが接待している」と考え、溺れるどころか、その頃から極力控えるようにしていたのである。ぼくはそこで、以下のような教訓を得た。

「接待に溺れてはいけない」

高級品を買い続けるも……

ただ、外食やクラブには溺れなかったものの、好きなものには溺れてしまった。ぼくはオシャレが好きだったので、お金が入ってくると、まず真っ先にこれまで買えなかったような高い服を買うようになった。

 すると、そういうお店は「おもてなし」のクオリティも高い。ついついいい気分にさせられるので、また来たくなる。また行くと、相手も喜んでくれ、やがて特別なお客さんとして扱われるようになる。そうこうするうちに、いつしかセレブ気分にどっぷりと浸かる羽目になったのだ。

 そういうお店は、常連客相手に特別なイベントやセールスを定期的に催す。それに招かれると、つい行ってしまい、たくさんの服を買う羽目になるのだ。

 ただ、そういうお店の服は高いので、やっぱりお金がたくさんないと、なかなか買えない。ぼくは、ベストセラーを出したとはいえ、それはたった1冊きりなので、いつまでもお金が続かなかった。3年も経つ頃には、そういうお店の服を買うのは経済的に苦しくなった。

 ところが、そういう懐事情をお店には言えないのである。つい見栄を張ってしまい、いつまでもお金がある振りをし続けてしまう。そのため相手も、いつまでもこちらをお金持ちだと思って歓待してくれる。だから、ついついそれに合わせて、高い買い物を続けてしまったのだ。

 ぼくは、自分にはもうそういう見栄はないもの思っていた。しかしそれは、浴槽の水垢のようなもので、日々を生きる中でいつの間にかこびりつく。あるとき、それにハッと気づかされたぼくは急に怖くなった。そうして、そうした高い服のお店に行くことをやめたのだ。

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