押し寄せる取材の波、「生意気」とお叱り

『もしドラ』の著者が明かす②

だから、それらの取材攻勢に対しては、ぼく自身の経歴が助けてくれたということがあったのだ。ぼくはそこで、以下のような教訓を得たのだ。

「取材記者に対しては、面白い見出しになりそうな、なるべく突拍子もないことを言った方がいい」

テレビの場合、ボケ役は「凶」

さらに、紙媒体が過ぎると今度はテレビの取材が待っていた。ここでも、それまでの経験が役に立った。ぼくは、以前テレビの放送作家をしていたので、どういうコメントが求められ、それがどのような使われ方をするのか、だいたい分かっていたのである。

 テレビというのは、いつでも「天然ボケ」の人を探している。天然ボケの人が一人でもいると、スタジオのトークが盛り上がりやすいからだ。そこでトークの流れが滞れば、その天然ボケの人にボケさせて、一笑い取れるからである。そういう、トークの安全弁になるのだ。

 そのため、初めてのゲストがスタジオに来ると、ちょっとした洗礼を浴びせられる。例えば「印税どれくらい入りました?」など、答えにくい質問をしてくるのだ。そうして、それに対するリアクションを伺うのである。そこで、しどろもどろになったり、あるいはその逆に、うっかり真面目に金額をしゃべったりすると、とたんにツッコまれ、ボケ役として扱われてしまう。

 そうなると、テレビ局の人たちは喜ぶのだが、今度は逆に、こちらのイメージがダウンしてしまう。そうして、本の売上げにも影響しかねない。テレビというのは、紙媒体とは違って、影響力が桁違いに大きい。だから、たとえ相手を喜ばすことでも、そこでは突拍子もないことは言わない方がいいのだ。むしろ無難に、穏便に過ごした方がいいのである。紙媒体とは真逆なのだ。

 ぼくは、放送作家時代に、ボケ役を引き受けたばっかりにイメージダウンを余儀なくされた文化人を何人も見てきた。だから、そこでいかにボケを期待されるような質問をされても、あくまでも穏便な答えに終始したのである。そうして、なんとかイメージダウンを回避した。

 それで今度は、周囲の人から「いつもの岩崎さんらしくないですね」と言われる羽目になった。しかし、いつものぼくらしくしていたら、そこでイメージダウンは避けられなかったはずだ。

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