今の日本人一般の印象でいえば、中国は傲慢な大国であり、そこに強烈な「中華思想」が存在する。ここでいわゆる中華思想とは、中国の、すぐれて自己中心的な論理、あるいは振る舞いをもたらす論理のことである。
ではこの中華思想は、どのようにしてできたのか。なぜ今の中国で、それがこれほど顕著になっているのだろうか。
中国人の思考は、意識するとせざるとにかかわらず、多くが儒教をベースにしている。儒教が二千年来、言語表現のレベルに至るまで、ずっと知識人を支配してきたイデオロギーだからである。中華思想の根源をたどると、儒教思想の一部に行き着く。儒教の教理がわかれば、中華思想とは何かがわかるはずだ。
儒教の基本的な立場は自分本位であり、自分という存在を大事にする。まずはわが身の生存である。「衣食足りて礼節を知る」というが、自らの衣食も乏しいのに、他人への礼節になど構ってはいられない。
自分が第一、そのうえで初めて他人との関係がある。儒教の経典『大学』にいう「修身・斉家・治国・平天下」。あまりにも有名なこのフレーズからも、儒教の発想法がわかる。「天下」よりも、まず「わが身」「わが家」である。
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