冬のゴルフから学ぶこと

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プロゴルファー/青木 功

 「冬のゴルフは、寒いからな」、なんておっくうがらずに出かけてみてください。良いもんですよ。いろんな準備や工夫が必要だからです。
 まず、冬は体が硬くなりがちですから、日頃から歩いたり柔軟体操をしたりして体をいたわっていないとうまくいきません。ラウンド中も、夏と違って厚着をしていますからね。下着一枚で、ワンクラブ飛びが違います。セーターとウインドブレーカーでもワンクラブ、それに気温の低さとアゲインストの風もありますので、ますます飛ばなくなります。
 その反面、地面が硬い分ドライバーは余計転がりますが、とにかく、冬のゴルフはオンシーズンと条件がいろいろ違うってことです。

でも、ごく普通のアマチュアゴルファーはそういったことを忘れ、「こんなはずじゃないんだけど」と落胆し、一日が終わることが多いんです。プロゴルファーは「その土地に慣れろ」が鉄則ですから、臨機応変に対応できるように体が出来上がっています。また、そうじゃないとプロゴルファーと言えないかもしれません。

その土地、コースや気温に慣れるには、パッティンググリーン上でボールを転がしてみることです。パッティングはゴルフの基本、ボールの転がりを見るとその日のゴルフの調子がよくわかるんですね。14本のクラブの中でいちばん短いクラブがパターですから、そのパターの芯にボールが当たらない人が、14本の中でいちばん長いクラブのドライバーの芯に当るはずがありません。
 自分は、ドライバーの調子が悪いときにパターの練習をすることは珍しいことではありません。どんな練習をするかといいますと、足の裏を地面から離さないベタ足打法です。これは昔から言っていることなんですが、パッティング、それにバンカーショットはゴルフの基本だからです。

まず、最初に足を動かさないでクラブを振る練習をします。これって結構難しいんですよ。クラブを振ろうとすると、本能的に上体や脚でスイングのリズムを取ってしまうんです。この無駄な動きをやめて、腕だけでクラブを振る。この練習をすると体に軸ができるんです。
 ですから、ゴルフ経験の浅い研修生が教えてくれって自分のところに来ると、初めの半年ほどは、足の動きを止めてクラブを振る練習だけをさせるんですが、この練習が好きな研修生は少ないですね。青木のところに行くと特別なテクニックを教えてくれると思っているんでしょうが、体に軸ができてからのことなんです。テクニックを学ぶのは。

冬のゴルフは初心に戻れます。多くの場合、ゴルフの調子の悪い原因は体の軸のブレ。パッティンググリーンでチェックしてください。きっと軸が動いていますよ。

プロゴルファー/青木 功(あおき・いさお)
1942年千葉県生まれ。64年にプロテスト合格。以来、世界4大ツアー(日米欧豪)で優勝するなど、通算85勝。国内賞金王5回。2004年日本人男性初の世界ゴルフ殿堂入り。07、08年と2年連続エージシュートを達成。現在も海外シニアツアーに参加。08年紫綬褒章受章。
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