大都市は途上国モデル、人口減、高齢化が直撃--『人口減少時代の大都市経済』を書いた松谷明彦氏(政策研究大学院大学教授)に聞く
──活路はありませんか。
途上国には造れない製品を日本は造ることだ。それには二つの課題がある。技術開発と、もう一つは熟練労働者による、より高価な製品造りだ。そして、量産品ではなく高級品を手掛ける企業をつくり出して乗り切る。できれば、既存の企業が潰れる前に、量産品型から高級品型に衣替えするのがいちばんいい。ヨーロッパはそうしてきた。日本にできないわけはない。
──ともに内向きではなく国際分業ですか。
職業教育において高級品を造る熟練した職人の技的な技術を掘り起こし、次代につないでいくことは大事だ。だが、それを日本人だけで頑張っても無理があり、いくら優秀だといっても、世界が相手では限定的になる。世界から優秀な人材を集めてくることだ。本当に必要なのは、低賃金単純労働者ではなくて知的労働者がどんどんやってくる日本の魅力。日本には豊かな資本がある。それを活用して存分に働いてもらうことで、世界に類例なき技術開発を起こすことこそ大事だ。
──中心は必ずしも日本企業でなくてもいい?
日本人は、日本企業が伸びることが日本の経済の発展であり、それでみんなの生活が豊かになると思いがちだ。欧米社会はそうではない。どこの国の企業でもよくて、自分の国でくんずほぐれつの競争をして、いい製品を造り、高い給与を払ってくれれば、それでいいという発想だ。
日本人はとかく出ていくことが国際化であると思って、入ってくることは国際化の勘定に入れない。優秀な人が国内で国際的な技術競争を行えれば、日本の開発力は一挙に上がるし、途上国が簡単には追いつけない技術レベルにもなる。