大都市は途上国モデル、人口減、高齢化が直撃--『人口減少時代の大都市経済』を書いた松谷明彦氏(政策研究大学院大学教授)に聞く
──その際の大都市経済の役割はどうなりますか。
ある意味で役割分担をしてもいいのかもしれない。人間力と国際化を活用する高級品を造る路線において、大都市はもっぱら国際化を目指す。それも、高級品を主軸にするのではなく、開発を通じた、先進の超近代的な製品を主軸にする方向だ。逆に、それだけ海外に人材を仰がなければならない。
──人生設計でも発想転換が必要ですか。
大都市地域の人々は、あまりに多くのものを大都市自体から得ようとしていないか。あれもこれも、といった街づくりもいずれできなくなる。たとえば、多額の資源を投じてまで、緑地だ水辺だと擬似自然を市街地に演出するというのは、投資能力が急速に減少する人口減少社会にあっては、少なくとも適切な都市整備とはいいがたい。
人生設計でもそうだ。寿命が延びる。しかし残念なことに、働ける期間はそんなに延びない。リタイアした後の収入のない期間が延びるので、長寿化は年平均所得が落ちることを意味する。ここは考え方を変えて、おカネで買えないような人生の豊かさを各人が求めるようになっていかないと、どうやっても心が貧しくなる。人々が少しでもそうした行動を取るだけで、大都市の持続可能性もまた向上する。
(聞き手:塚田紀史 =週刊東洋経済2010年12月18日号)
つたに・あきひこ
1945年生まれ。東京大学経済学部経済学科、同学部経営学科卒業。大蔵省主計局調査課長、主計局主計官、大臣官房審議官などを歴任。97年より現職。2010年国際都市研究学院を創設、理事長を併任。専門はマクロ経済学、社会基盤学、財政学。著書に『「人口減少経済」の新しい公式』など。
『人口減少時代の大都市経済』 東洋経済新報社 1890円 293ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら