大都市は途上国モデル、人口減、高齢化が直撃--『人口減少時代の大都市経済』を書いた松谷明彦氏(政策研究大学院大学教授)に聞く

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大都市は途上国モデル、人口減、高齢化が直撃--『人口減少時代の大都市経済』を書いた松谷明彦氏(政策研究大学院大学教授)に聞く

人口減少・高齢化時代を迎え、今後問題が先鋭的に噴出すると予想される一方で、危機感の薄い大都市こそ「大改造に着手していかなければならない」と警鐘を鳴らす。

──大都市のほうがむしろ問題ですか。

明治維新に社会・経済・政治システムの大改革、指導層の入れ替えがあった。その結果、日本は先が見えた。同じ努力をなぜ今しないのか。これには二つの英知に基づいた行動が必要だ。社会の大改造を手掛け、同時に、手本がない中で本当に独創的な製品群を造る。そこには試行錯誤があり、失敗もある。それを乗り越え、未来を開こうではないか。

実際、地方と大都市とを比べると、大都市ほど変えようとする動きに乏しい。地方は切羽詰まってきているので、方向としてうまくいっているかどうかは別にして、変えなければどうにもならないという危機意識が先取的なところほどみなぎる。ところが大都市は、どこも今のところ食べていけるため、ノホホンとしていて危機感さえない。

──東京や名古屋はまだ20年ぐらいは成長すると書かれています。

20年経ったら、もう取り返しがつかない。生意気なようだが、次のように言いたい。事業をやっていて、その事業を自分の代だけもたせようと思うなら、私の話に聞く耳を持たなくてもけっこう。だが、子や孫の代まで続かせたいと思うなら、話を聞いてほしい。まだ日本として力のあるうちに転換しておくべきだと。

──大都市、特に大都市経済の何が問題ですか。

大都市経済は今や危ない。この経済は「途上国モデル」そのものだ。輸入技術とロボットで成り立っている。技術開発の必要がなく、ロボット生産だから熟練労働者も必要ない。そうして大量に造って安く売る。途上国が発展過程としてまずたどる道筋だ。そこにとどまっている。これから、人口の減少、高齢化という巨大な変化が直撃する。その前にもう八方ふさがりになっている。

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