トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』が話題になっている。この本の意義は、「近代とはいったい何だったのか」を問い直したことだ。
近代の始まりを象徴する出来事はフランス革命だ。この革命が目指したのは旧来の身分制度から脱し、実力があれば富を築くことができる、実力主義の社会を作ることだった。
ところがピケティ氏が提示したマクロのデータを見ると、戦時下という特殊な状況を除き、一貫して富の偏在が進んでいる。近代の実力主義の理念が実現されたとは言えない。
経済的な観点から言うと、近代の理念は「より速く、より遠く」という言葉で表される。つまり新大陸など遠くのフロンティアを求めて誰よりも速く移動し、売上数量を伸ばして利潤の極大化を追求することだ。
しかし現在、地球上には工場やオフィスビルといった実物投資空間のフロンティアはもはやほとんど残っていない。先進国はおろか、中国など新興国も軒並み成長が鈍化した。最後のフロンティアであるアフリカにこの傾向が及ぶのも時間の問題だ。長期にわたる超低金利は「もう地球上には投資先がない」と、市場が気づき始めた結果にほかならない。
「より速く、より遠く」移動するにはガソリンなどエネルギーが必要だ。足元の原油価格は下がったとはいえ1970年代のような1バレル=2~3ドルには戻らないだろう。新興国の消費量が年々増えているうえ、自噴する油田は大半を掘り尽くしてしまい、海底などから掘り出しているため、採掘コストが上がっている。あと数年も経たないうちに原油価格は一気に上昇するだろう。エネルギー価格が上がれば、「より速く、より遠く」が実現しにくくなる。
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