結婚の壁 非婚・晩婚の構造 佐藤博樹・永井暁子・三輪哲編著 ~社会経済の変遷が家庭の形成に大きな影響
評者は研究者の道に進んだこともあり、自分のことを棚にあげれば、イケてない同世代の仲間が多かった。だが時が過ぎるにつれて、すべての供給は需要とマッチするのか、お見合い、職場での出会い、紹介サービスや合コン、果てはナンパを通して、この数年で次々と結婚していった。しかも10歳以上若い相手も珍しくない。こうした狭い範囲の観察結果がどれだけ偏っているのか、結婚の実像はどうなっているのか、正確なところが知りたいと思っていた。
少子化は、社会保障制度の維持にあたり大きな障害となっている。その前提となっている結婚はどうなっているのかを、データで浮き彫りにしたのが本書である。結婚する手段の変遷、結婚願望の変化、出会いが得られるのはどこか、同棲経験の与える影響、学歴や、年収などの経済力など、さまざまな視点から未婚と結婚の境をなす壁がどこにあるのかを明らかにした。
30代後半でこれまで異性との交際経験のない人が男性で1割、女性で5%にも上ることが指摘されている。これは30年前の未婚率に相当するという。当然、それを上回る未婚者がいるわけで、この問題の深刻さを物語っている。個人の経験談ではなくデータ分析による学術書であるため、やや読みづらくはあるが、それだけ説得力があり、冒頭の評者の疑問は氷解した。
派遣等の非正規雇用が増えたことが職場でのマッチングの可能性を小さくした、という本書の指摘は、社会経済の変遷が人間生活の基盤である家庭の形成に大きな影響を与えることを示している。結婚とは本来非常にプライベートなことであり、部外者がとやかくいうことではないのだが、社会経済制度から影響を受け、また、影響を与えるだけに、重要な問題であることを再認識させられた。
さとう・ひろき
東京大学社会科学研究所教授。1953年生まれ。専攻は人的資源管理。
ながい・あきこ
日本女子大学人間社会学部准教授。1965年生まれ。専攻は家族社会学。
みわ・さとし
東北大学大学院准教授。1972年生まれ。専攻は社会階層論、計量社会学。
勁草書房/2520円/198ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら