IBMのビジネスモデル転換は製品からサービスへ、ハードからソフトへということになるが、それだけでは本質を表したことにはなるまい。IBMはソフト関連のさまざまな部門から撤退している。たとえばPCのOSからの撤退だ(IBMのOS/2はマイクロソフトのウィンドウズより優れているという意見が外部でも強かったにもかかわらず)。また、多数のアプリケーションソフトや通信からも撤退した。
ガースナーは、インターネットが普及すれば大型コンピュータが復活すると考えていた。著作が出たのは02年のことだが、すでに「クラウド時代」の到来を予測していたことになる。ガースナーの慧眼(けいがん)に感服せざるをえない。
ガースナーは、資本集約的な製品製造事業と労働集約的なサービス事業とでは、ビジネスの進め方がまったく違うとも述べている。正しい方向付けに従って、正しい手法でそれを進めたことが成功の理由だ。
07年12月期以降各年度のIBMの税引き前利益は、145億ドル、167億ドル、181億ドルと伸び続け、直近での総資産利益率(ROA)は11・5%、株主資本利益率(ROE)は70・8%という高さになっている。IBMは、環境大変化という試練を見事に乗り切ったわけだ。
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2010年12月11日号)
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