近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 原田曜平著 ~村社会にこもる若者たちの本音
しかし、そういう村社会的な文化は、高度成長期に薄れていった。地方から都会へ大量の労働人口が流入し、村がなくなったり、人付き合いが希薄になったからだ。マンションに住む者は隣人との付き合いをする必要はない。
ところが著者によれば、近頃の若者は村社会を作っているようだ。地域による「村」ではない。中学校のときの友達、高校のときの友達、大学生のときの友達、バイト先の友達、友達の友達、友達の友達の友達。こうして1人の若者がいろいろな村(関係)を持っている。500人以上のメールアドレスを登録している若者は少なくない。
ケータイメール出現以前は、こうはいかなかった。中学から高校へ、高校から大学へ、そして就職と人生の階段を上がるごとに、以前の仲間とは疎遠になっていった。恋も友達関係も、いつかは脱ぎ捨てるものだった。
今はメールアドレスが登録され、仲間としょっちゅう連絡を取り合える。だから関係を重ね着する。たくさんの仲間といつも連絡し合うのだ。彼らは忙しい。今年になって「引きこもり70万人」と報道されたが、20代半ばより若い引きこもりは、家の中でケータイを使い、けっこう忙しく楽しく仲間とのコミュニケーションを楽しんでいるのかもしれない。
新入社員の半数が「海外で働きたくない」と考えているらしいが(産業能率大学調査)、確かに若者の海外志向は鈍っている。若者の海外旅行者数も留学生数も落ち込んでいる。若年者数の減少などの複数要因があるが、そもそも近頃の若者は「海外がかっこいいと言う人がかっこ悪い」と思っているらしい。また「ハワイは面白くない」というブログを読むと、「ハワイは面白くない」という情報が頭の中に固定されてしまうらしい。