近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 原田曜平著 ~村社会にこもる若者たちの本音
近頃の本は、タイトルと内容が一致しないことが多いように思う。この本もそうだ。タイトルに「若者はなぜダメなのか」とうたっているが、読んでみると著者は若者を「ダメ」と決めつけているわけではない。7年間に47都道府県でインタビューした1000名以上(!!)の生態や行動を分析し、その特徴を精密に描いているだけだ。年齢は15歳(高1)くらいから20代半ば。
この世代と上の世代を分けるのはケータイの使用歴である。音声通話機器としての携帯電話は1990年代に普及していったが、メールやWeb閲覧ができるようになったのは、1999年のiモードサービスの出現(NTTドコモ)からだ。そして現在ではデータ通信が音声通話を追い抜くまでになり、iPhoneやアンドロイド端末などのスマートフォンが隆盛期を迎えている。
しかしケータイメールが使えるようになったのは、この10年間のことなのだ。今の25歳は高1の頃にメールが使えるようになっていた。いま高1の生徒は幼稚園の頃に使えるようになっていた。かれらはケータイでメールを書きながら、読みながら成長した。
彼らの中にはケータイならボタンを見ずに高速で入力できる者も多い。大学生の中にはケータイで論文やリポートを書き、パソコンに送ってからプリントアウトする者もいる。現在の20歳代半ばを分水嶺に、明らかにケータイ歴が違う。このケータイ歴が近頃の若者がダメに見える原因と著者は推定している。
近頃の若者コトバに「KY」がある。「空(K)気を読(Y)めない」者をいやがることだ。時にはいじめに発展する。この「空気を読む」文化は、もともと日本社会特有のものだった。そしてかつての日本の村社会でも「村八分(葬式と火事を除くので八分)」があった。村の全員が、嫌われ者と絶交することを村八分という。