パン焼き器GOPAN大人気のヒミツに迫る!《それゆけ!カナモリさん》
確かにゴパンの大ヒットには販売促進(Promotion)の成功という要素が大きく働いている。それも、従来型のマスメディアのプッシュ型コミュニケーションではなく、インターネットを中心としたプル型・口コミ中心のコミュニケーションが販売を加速した点が大きい。
それは、2009年8月に発売され、ネットでの話題が話題を呼んで、今なお店頭では品薄が続く「桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油」、通称「桃ラー」のヒットにも通じる。「手に入るうちに、何とかして手に入れよう」「手に入らないと聞くと欲しくなる」という、一種の飢餓状態がネット上で沸き上がったのだ。
新製品のプロモーションに着手するのは通常、発売の3~4カ月前だが、ゴパンの場合は10カ月前の09年12月ごろ(日経MJ)というから、力の入れようが分かる。綿密に設計をしたのだろうが、ここまで盛り上がるとは、予想していなかったのではないか。ツイッターやブログなど、今や本当に良い商品は、口コミで瞬く間に世間に広がっていく。ネットで話題になれば、大手メディアも飛びつく。記事化されれば、さらに口コミが加速する…。
プロモーションが功を奏したことは間違いないが、ゴパンという製品(Product)のすばらしさと相まって効果を挙げたことを忘れてはならない。ゴパンは「世界初のコメからパンが作れるホームベーカリー」であり、そもそも「米粉が入手しにくいため米粒をペーストにして焼く方法を考案した」というイノベーションなのである。
■ヒットを生む整合性
イノベーションが普及する要件をE.M.ロジャースが5つにまとめている。1)相対優位性:前述の通り、従来も米粉を用いるパン焼き器はあったが、米粒から作れるという代え難い優位性がある。また、米粉は小麦粉と比べて独特のモチモチ感があり、それ自体が既にブームともなっていた。