オバマ大統領は能弁な“ブランド”に過ぎない--『アメリカとともに沈みゆく自由世界』を書いたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(ジャーナリスト、アムステルダム大学教授)に聞く

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--オバマ大統領は、『ローリングストーン』誌のインタビューで「自分はイデオローグではない」と言っていますが、政治的な信条を持っていないということでしょうか。

そのとおりだ。彼は確固たる政治的意思を持つべきだった。選挙運動中は能弁に語ったが、その公約を実現することはなかった。その結果、国民の支持を失ってしまった。民主党の支持基盤であるリベラル派の人々からも見放された。

──本の中でアメリカの現状を“悲劇”だと書いています。

ここで言う悲劇は、よい意図で始めたにもかかわらず、悪い結果がもたらされているということだ。ギリシャ文学の“悲劇”という言葉は、本来そうした意味で使われている。今のアメリカの状況はまさに悲劇そのものだ。たとえば、アメリカ国民にとってよかれという善意から金融制度を作り上げたが、それが意図せざる悪い結果をもたらした。また外交においても、世界の脅威を排除するというよい意図で始まったが、結果的には間違いを犯してしまった。

--アメリカにとって冷戦の終結、9・11、テロとの戦い、金融危機という四つの転機、あるいは危機があったとも指摘しています。

それらを契機にアメリカは変わってしまった。冷戦の終結で強敵がいなくなり、アメリカにとって恐れるものはなくなった。その結果、アメリカは自己抑制を失った。それ以降、他国に過剰に要求したり、権威的になったりした。大統領の権力も絶大になって、他国の抵抗を気にすることなく、世界的規模で自国の経済的拡張を図ることが可能になった。そうした傲慢さが連続テロ事件で明らかになった。アメリカは、その悲劇を自らのチャンスに変えることができたのに、そうはしなかった。むしろ政治的に利用した。


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