オバマ大統領は能弁な“ブランド”に過ぎない--『アメリカとともに沈みゆく自由世界』を書いたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(ジャーナリスト、アムステルダム大学教授)に聞く
そしてテロとの戦いを始めた。これは誰にでも受け入れやすいスローガンだが、ファンタジーにすぎない。任意に選んだ国を侵略、攻撃する大統領の権限を正当化するフィクションだった。新保守主義者たちは、アメリカは世界をコントロールすべきだと考えるようになった。そしてイラク戦争を始めたが、実はイラク攻撃は以前から計画されていたことだ。
第4の危機である金融危機は、アメリカのシステムに対する信頼を完全に失墜させた。金融危機は自らを抜本的に変えるチャンスであったが、オバマ大統領はそうはしなかった。
日本や、ドイツなど欧州の国が犯した最大の失敗は、オバマ大統領が時計を逆転させてくれるのではないかと期待したことだ。だが、現在、それは幻想であったことがわかった。
──アメリカのリーダーシップは幻想であるとも指摘しています。
人々がリーダーシップを認めるときは、その国が積極的な役割を果たすという期待がある。冷戦時代は、アメリカは自由世界を守る役割を果たしていた。当時のアメリカのリーダーシップには意味があった。しかし、現在のアメリカのリーダーシップは意味を成さなくなっている。アメリカは多くの戦争や経済危機を引き起こしている。それはもうリーダーシップとはいえない代物だ。アメリカの政策はパワーに依拠したもので、制御不能になっている。世界で起こっている多くの問題は、アメリカが世界をアメリカの価値観で満たすのが使命だと思っているところから起こっている。