オバマ大統領は能弁な“ブランド”に過ぎない--『アメリカとともに沈みゆく自由世界』を書いたカレル・ヴァン・ウォルフレン氏(ジャーナリスト、アムステルダム大学教授)に聞く

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──なぜヨーロッパはアメリカの暴走をチェックできないのですか。

それは大きな問題で、私が本書を書いた動機の一つだ。ヨーロッパはアメリカに、「ちょっと待て。その行動はクレイジーだ」と言うべきだ。しかし、イラク戦争が始まったとき、フランスやドイツは反対したが、途中で黙認するようになった。それは、それらの国の弱さだと思う。ヨーロッパの指導者は国民にイラク戦争の意味を明確に説明しなかった。独仏のメディアも同類で、日本のメディアもアメリカのメディアのコピーでしかなかった。

──アメリカを変える内的な圧力が必要だと書いています。

実際にアメリカを変える内的な圧力が出てくるとは思わない。ただ状況がさらに悪化すれば、外的な圧力が加わるだろう。ドル暴落のような事態が起これば、アメリカも対応せざるをえなくなる。

──アメリカには自己修正能力はないのですか。

今のアメリカにはそうした機能はない。アメリカのメディアは大企業の影響下に置かれており、かつてのような機能を果たせなくなっている。リベラル派も右派の攻撃に直面して、自己主張できなくなっている。反戦運動もベトナム戦争のときと比べると信じられないほど弱い。このままではアメリカはゆっくり崩れていくことになるだろう。

(聞き手・東洋英和女学院大学 教授:中岡 望 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2010年12月4日号)

Karel van Wolferen
1941年オランダ・ロッテルダム生まれ。72年オランダのNRCハンデルスブラッド東アジア特派員、82~83年日本外国特派員協会会長。フィリピンのエドサ革命報道でオランダのジャーナリズム最高賞。『フォーリン・アフェアーズ』、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンなどに寄稿。

『アメリカとともに沈みゆく自由世界』 徳間書店 1890円 397ページ

  


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