瀧本:博報堂では、社内トレードみたいなことがたくさんあるんでしょう? だから多分、博報堂の中で今までに何度も転職してるんですよ。
原田:僕ほど部署を異動してる人間はいないというぐらい、2年に1回ぐらい部署を変わってるんですよ。やってることはいっさい変わらないけど。
瀧本:もし学生が、「自分も博報堂で原田さんみたいに働きたいです」と言ってきたら、どう答えますか?
原田:僕が会社で尊敬している方がいるのですが、その方が「つねに在野であれ」という言葉を僕にくれたんです。その方は在野どころか中枢の中枢だったんですが、つねに在野精神を大切にされていたというのはかっこいいですよね。
僕はその方と比べると、やってること自体からしてすでに在野。でも、なんでか時代が徐々にマッチしてきたのか、結果的にメディア露出や業務のご依頼が異常に増えています。でも、僕は自分が在野であることを自覚していますし、その方が言うように、在野にいないといけないと思っています。
まずは組織の王道ルートを目指せ
あとですね、最近は、若手の後輩に、「原田さんみたいに若者研究やりたいんです」って言われることがたいへん多くなりましたが、「若者が若者を語るな!」って冗談を言って逃げるようにしています。僕自身は若者のうちから若者研究をやってきた身ではあるのですが。
なぜかと言えば、やっぱり、精神としての在野は大切ですが、業務としては、まずはその組織の王道ルートを目指すのが基本だと思うんですよね。
以前、ロッテにいた渡辺俊介というアンダースローのピッチャーが、テレビで小学生から、「渡辺選手みたいになりたいんですけど、どうしたらいいですか?」と聞かれていたんですよ。「ぎりぎりまで普通に上から投げ続けろ。どうしても通用しないということを確信したら、下手投げにしろ。アンダースローは最初からやるべきものじゃない。あくまでも変則的な戦法で、王道を磨いてから変則に移るからこそ身につくし、生き残れるようになるんだと知っておくべきだ」なんて難しいことを小学生相手に言っていた。
やっぱり会社も同じ。いちばんの収益源である組織で上り詰めるのが、最も社長になる確率は高い。社長になるのが幸せかどうかはおいといて。会社に適応できるなら適応したほうがいい。でも意外と日本の企業って懐が深いところがあるから、外部からはまったく見えないことが多いんですが、想像以上にいろいろなことをやっている人や組織があったりする。王道を目指すだけ目指して、ダメそうなら、そうした生き方を模索しても遅くはないんじゃないでしょうか。渡辺投手がそうだったように、アンダースローでも先発四本柱に入れてくれるぐらいの可能性が超優良企業が多い日本にはある気がします。
瀧本:最初は普通に王道を目指すほうがいい。でもどうしてもダメならほかにも生き方はあるから、そう悲観しなくてもいいということですね。組織からはみ出しがちな人にも、生きる道はあるし、それはむしろチャンスかも知れない。そういう希望を与えたんじゃないでしょうか。
(構成:長山洋子、撮影:風間仁一郎)
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