王道がダメなら、変則的な戦法でやればいい 原田曜平×瀧本哲史 対談(後編)

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原田曜平(はらだ ようへい)●1977年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、(株)博報堂入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、現在、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。多摩大学非常勤講師。2003年JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。専門は若者研究で、日本およびアジア各国で若者へのマーケティングや若者向け商品開発を行っている。近著に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』 (幻冬舎新書)、『さとり世代 盗んだバイクで走り出さない若者たち』(角川oneテーマ21)などがある。

瀧本:漫喫で書いていたんですか?

原田:はい。やっぱり初めて1冊の本を書くのは、すごくハードルが高かったし、基本的にパワポ文化がしみついているので、長い文章を書くのがすごくつらかった。やっぱり大学時代に書いていた脚本とは明らかに違う。何度も編集者のもとに書いたものを持っていっては、「ここがダメだ」と言われてまた書き直す。半年くらいずっとそういう生活を続けて、その期間はとにかく一生懸命やったんですよ。そうやって書いたのが、『10代のぜんぶ』という本で、これがちょっとだけ話題になった。本当はCMプランナーになろうと思って広告会社に入ったものの、民間研究者になった自分のコンプレックスがちょっとだけ埋まったような気がします。

瀧本:でも若者論というのは、いいところを掘ったんだろうな。知り合いの編集者でも、ずっとやりたい企画が通らなくて、くさっていた時期の長い人は多いですよ。でもそういう人ほど、ある日いきなり大ヒットを飛ばす。だから潜伏期間って、実は大事なのかもしれない。だいたいブレイクする前って、なんだかよくわからない模索期間のようなものがある。そこはみんな共通している気がしますね。

ダメと言われても、ヒットすることはいっぱいある

瀧本:やっぱり企画が当たるときって、みんなが「ダメだろう」と言っている分野で起こることが多い。『ハリー・ポッター』もそうですよね。すべての編集者に断られて、限りなく自費出版に近い出版社に行って、しかも積み上げられた原稿のひとつにすぎなくて。編集者の娘がたまたまその中から取り上げて、「パパ、これ面白いよ」と言って出版決定。しかも“児童文学のファンタジーは当たらない“というのが定説だったらしい。でも『ナルニア国物語』『指輪物語』以降、しばらくファンタジーが出ていなかったので、それもヒットにつながった。

だから、みんながいいと思ってるものをやるよりは、そうじゃないところで、しかもその前に長い模索期間があったほうが、新しいことが起こるのかもしれない。

原田:僕も今から振り返って考えてみると、周りの人間から「今は子どもの数も少ないし、若者研究はおいしいジャンルではないよ」と言われていました。当然、自分でもすぐにやめるものだと思っていました。が、人口が少ないからこそ、そこに詳しい専門家は減るし、それでいて、意外と親子や祖父母との2世代消費・3世代消費は盛り上がる。また、人口が少ない上に、若者が消費をしなくなっているので、より困る企業も多くなってきた。また、いくら少なくなっても若者は未来の主役であるので、企業も無視できないし、今の若者は実家へのパラサイト率が高いから、収入が減っても、稼いだおカネを使えて、可処分所得が高いんですね。日本のサラリーマンの1カ月の平均お小遣いは3万円代ですが、大学生のバイト代はもっと多いですからね。

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