山上:その立ち上げプロジェクトの最中に、実はLIXILが2008年から「水や電気を使わないトイレ」の研究をベトナム、ケニア、インドネシアで始めていると知りました。
2050年に世界人口が100億人になったとき、飲料水を確保するだけで大変なのに、貴重な水資源を使う水洗トイレでは成り立たなくなるだろう、だから水を使わないトイレを作ろうとしている、と。
もう私以外に誰がやる!ぐらいの気持ちでアピールして、異動することができました。
尿と便に分離、肥料にして循環させる
──ケニアで具体的にどういう仕組みのトイレを研究しているのですか。
山上:コンセプトの第1は水資源の確保、第2は資源循環です。水や電気を使わずに、し尿を尿と便に分離して肥料にします。
──昔の肥だめとどう違うのですか。
山上:日本が培ってきた、し尿を堆肥にするというローテクノロジーにプラスして、最先端の微生物研究を融合させて、適切な肥料にします。
人間のし尿に含まれている窒素、リン、カリウムは、植物を育てる3大栄養素なのですが、それは廃棄されてしまっています。でも今、リンの埋蔵量が枯渇し、価格が高騰しているのです。世界人口が増えていって、食料を効率よく作るためには化学肥料が必要なので、ニーズが増えている。でも、特に新興国の場合、肥料を手に入れるだけのおカネがないので、せっかく土地があっても効率的に農作物を作ることができず、収穫量は低いままです。
この食料問題を解決するためにも、今、捨てられてしまっているし尿の栄養素を回収して、また畑に戻そうとしています。「循環型」という意味で、「グリーントイレ」システムと呼んでいます。
ただ、新興国は日本のようにすべてがそろっているわけではないので、自分で作ってメンテナンスもできるように、トイレの構造はシンプルでなければいけない。ローテクとハイテクを融合させて、いかに気持ちのいいものを作っていくかが課題です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら