日本はデジタル家電で残された最後の砦「デジカメ」を守れるか《特集・カメラ新世紀》
OEMの活用が諸刃の剣に
一方、すでに過当競争気味なコンパクト市場では、二つの二極化が進行中だ。一つ目は、勝ち組と負け組による収益格差の拡大。ユーザーを引き付ける新しい機能を見いだせない中、訴求ポイントは価格のみになりやすい。規模の経済がストレートに効いてくるため、一般的に上位メーカーはより有利に、下位はさらに苦しくなる。
もう一つが、自社生産を堅持する垂直統合組と外注生産を拡大する水平分業組との、製造における戦略格差。キヤノンとパナソニックを除けば、その他の会社は海外OEM(相手先ブランドで製造を請け負う会社)の活用を拡大している。
コンパクトでは、台湾のOEMの生産台数が、日本メーカーの国内外自社工場での生産台数を10年に上回る見通しで、11年にはその差が確実に広がる。こと生産において、日本メーカーの砦は崩れている。
個別の立場ではOEMの活用は理にかなっているが、OEMが力をつけるに従い、日本メーカーの存在感が低下したのが、ほかのデジタル家電がたどった道だ。
加えて、iPhone(アイフォーン)に代表されるスマートフォン、内蔵カメラの高画素化がとどまるところを知らない携帯電話が、専用機であるデジカメの撮影シーンを着実に侵食しつつある。
日米欧中心の市場から、中国を中心とした新興国市場の重要性が増している。このことは市場の拡大を約束する一方、さらなる低価格化を引き起こしかねない。現在の中国では、先進国よりも高価な一眼レフが売れている。中国の消費者がどういったカメラを好むかは、市場の趨勢に少なからぬ影響を与えるだろう。