日本はデジタル家電で残された最後の砦「デジカメ」を守れるか《特集・カメラ新世紀》
東京・墨田区の業平橋周辺。この日も大勢の観光客が建設中の東京スカイツリーを撮影していた。彼ら彼女らの多くが手に持っているのは、高級デジタル一眼レフカメラ。複数のカメラを使い分けているつわものもいる。
カシオ計算機が現在につながる世界初の民生用デジタルカメラ(デジカメ)「QV10」を発売しておよそ15年、デジタル一眼レフ(一眼レフ)が普及し始めて10年。デジカメはすっかり日常に溶け込んだ。
銀塩カメラ時代から比べると、カメラ市場は3倍(台数ベース)になった。デジタル化=カメラ機能の一部が半導体に置き換わったことで、家電メーカーなどが新規に参入。競争激化で価格は下落し、それが一層の普及を促進するというスパイラルに入ったからだ。
成長してきたデジカメ市場で、日本メーカーは大いに稼いできた。
コンパクトデジカメ(コンパクト)では8割弱、一眼レフでは99・8%(ともに2009年)のシェアを日本勢が占める。レンズ、撮像素子(イメージセンサー)、画像処理用LSIといったキーデバイスでも日本メーカーは優勢だ。
パソコン、携帯電話、薄型テレビ……成長が期待されたデジタル家電の大半で、日本メーカーは苦戦している。デジカメはまさに“日の丸家電"の最後の砦といえる。
しかし今、カメラ産業に新しい波が次々と襲いかかっている。
08年に登場したミラーレス一眼は、小型化・軽量化しやすい構造上の特長を武器に、これまで一眼レフが独占してきた高付加価値市場の奪取を狙う。ミラーレス陣営を牽引するのは、パナソニック、ソニーの日本の家電メーカー。だが、一眼レフより電子化が進んだミラーレスは、新規参入が容易なため、競争激化が懸念される。すでに韓国のサムスン電子が参入、得意の積極投資で攻勢をかけてくることが予想される。