2010年には「リゾート・ワールド・セントーサ」と「マリーナ・ベイ・サンズ」の2つの統合型リゾート施設が開設された。リゾート・ワールド・セントーサはユニバーサル・スタジオを併設するファミリー向けのリゾート施設で、マリーナ・ベイ・サンズはMICEに重点を置き、ビジネス・コンベンション客を意識した施設となっている。2つのIRが観光産業にもたらした影響は大きく、2013年の外国人観光客数は1557万人と、IR導入前の2009年に比べて約6割増加した。
2013年の観光収入を見ても、2009年に比べて5割以上増加しており、観光収入全体の約20%がカジノを含む観光・娯楽による収入であった。
なお、シンガポールでは、IRが稼ぎ出す収益のうち、7~8割がカジノ事業によるものと言われている。カジノは総施設面積の数%の規模にとどまっていることもあり、決してカジノ色が強いわけではない。その一方で、カジノで稼ぎ出す収益があるからこそ、相対的に収益性の低い他の施設への投資も可能となり、IR全体として集客力のある魅力的な施設を作り上げることができている面もある。
カジノを含む統合型リゾート施設開設の経済効果は約4兆円!
IR推進法の成立に向けた政治の動きと並行して、全国の地方自治体やカジノ関連企業の動きも活発になってきている。現在、IRの導入を検討している地方自治体は東京都(台場)、大阪府(夢洲)、沖縄県など全国各地にある。また、海外の大手カジノ運営企業が日本への進出に意欲的な姿勢を示しているほか、海外のカジノビジネスに参入することで、運営のノウハウを学ぼうとしている企業も出てきている。実際に法案が成立すれば、カジノ運営企業だけでなく、建設・不動産、ゲーミング機器の製造会社をはじめ、カジノ施設以外のホテルや小売り・飲食店、旅行業、エンターテインメント関連業など、さまざまな企業がIR市場に参入し始めることが予想される。
現段階で具体的な設置地域や規模などが決まっているわけではないが、ここでは、仮に東京地区でカジノを含む統合型リゾート施設が建設された場合の経済効果について、①施設建設のための投資額、②カジノ運営による経済波及効果に分けて考えてみよう。なお、①はIR開業前の建設期間中に見込まれる効果、②は開業後1年ごとに生じる効果と考えることができる。
まず①の建設投資額については、カジノ後発国として話題性のある施設を開発するために、一定の質と量を確保することが必要になると想定されることから、投資規模がシンガポールと同等になると仮定した。これにより8053億円規模の投資(土地取得費除く)が行われることになる。
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