そもそも、日本でカジノ・IRの導入機運が高まるきっかけとなったのは、「観光立国」を目指す政府の方針と、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催決定であった。安倍政権は観光立国の実現を成長戦略の柱のひとつに選定し、2020年に向けて訪日外国人数を現在の約2倍の2000万人にする目標を掲げている。
カジノビジネスをそのための起爆剤にすることをもくろみ、オリンピック開催を機にIRを本格始動させたいという考えである。
カジノはその目的に応じて、「外貨獲得型」「地域振興型」「国内エンターテインメント型」の3種類に分類することができる(妹尾雅夫・中村圭介「カジノと観光産業」『価値総合研究所 Best Value vol.05 2004.4』による分類)。
たとえば、世界最大級のカジノ市場を有するマカオは、カジノを基幹産業として位置づけ、外国人観光客から外貨を獲得することを主目的としているので「外貨獲得型」である。IR先進国として注目されるシンガポールは、観光産業の目玉として位置づけ、地域活性化を目指しているので「地域振興型」、ドイツやイギリスは、国民の余暇需要を充足することを一義的目的としているので「国内エンターテインメント型」に、それぞれ分類される。
日本で導入を目指すカジノは、シンガポールなどのような「地域振興型」である。カジノ単体ではなく、ホテルやショッピングモール、エンターテインメント施設、MICE(M=企業会議、I=企業などの行う報奨・研修旅行、C=国際会議、E=展示会・見本市の頭文字を取ったもの)を併設した統合リゾート施設の開設・運営が、地域経済の振興に寄与するものと期待されている。
シンガポールのカジノが成功した理由
カジノ・IRの分野において、シンガポールは成功事例のひとつと称されている。ただし、そのシンガポールにおいても、カジノの合法化は1980年代より続いてきた長年の懸案であった。急展開を見せたのが2004年のことであり、首相に就任したリー・シェンロンがカジノ導入に向けて舵を切ったことで、2005年に合法化に至った。
1980年代、シンガポールはアジアの観光地として圧倒的な存在感を発揮していたが、その後、アジアの都市間競争が激化したことで、観光産業の国際競争力低下への危機感が強まっていた。こうした状況下において、カジノ解禁が実現に至ったのである。
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