サントリーが「ティップネス」を手放す理由 儲かる会社をなぜ日本テレビに売るのか?

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全国に61拠点、約25万人の会員を抱えるティップネスは大手民放の傘下に

サントリーの社内ベンチャーとして設立されてから約30年。今やティップネスはフィットネス業界4位にまで成長した。グループの中でも手堅く利益を上げていたこの子会社がサントリーの手から離れることになった。

ティップネスの売却先としてサントリーが11月21日に発表したのは日本テレビホールディングス。保有する株式は年内をメドに譲渡する。売却額は350億円とも報じられたが、会社側は金額を開示していない。ティップネスの業績は売上高329億円、営業利益23億円(2013年3月期)と堅調だ。ただ、近年の店舗数は60店前後と伸び悩んでおり、「業界全体で総合型フィットネスクラブの出店余地はなく、出店数は極めて少ない状況。新業態『FASTGYM24』ブランドの出店に注力している」(ティップネス広報)という。

重点分野に経営資源を集中

子会社売却の理由について、サントリーは、「酒類、飲料という二つの重点分野を中心に、グループ全体で国内外の成長を進めており、今回のティップネスの株式譲渡はこうした方向に合致している」と説明する。一方、日本テレビは買収の理由を、「メディア・コンテンツ事業とは異なるビジネスモデルによる収益源ポートフォリオの多様化のため」という。

これまでもサントリーは非中核事業の売却を進めている。収益柱だったウイスキーの販売数量が激減し、業績が悪化した2000年代には、医薬品やゴルフ用品販売、出版、ハワイの不動産事業などから撤退した。この10年間は手を付けていなかったものの、今年に入り、外食のコンサルティング事業から撤退し、再び非中核分野の整理に着手している。

背景にあるのが、今年5月に完了した米蒸留酒大手ビーム社の巨額買収だ。1兆6000億円というサントリーにとって過去最大の買収で、有利子負債は1兆円規模に膨らんでおり、財務の健全化が喫緊の課題となっている。

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