元日産系「電池メーカー」、中国傘下で飛躍なるか エンビジョンAESC、ベンツから受注獲得に成功

✎ 1〜 ✎ 847 ✎ 848 ✎ 849 ✎ 最新
拡大
縮小
エンビジョンAESCはメルセデスベンツからの受注を機に、生産能力の大幅増強を目指す。写真は同社の車載電池生産ライン(エンビジョンAESCのウェブサイトより)

中国の再生エネルギー大手の遠景科技集団(エンビジョングループ)は3月16日、傘下の車載電池メーカーの遠景動力(エンビジョンAESC)が、ドイツの高級車大手メルセデスベンツと車載電池の供給契約を結んだと発表した。

メルセデスベンツは、アメリカのアラバマ工場で生産しているSUVタイプのEV(電気自動車)「EQS」と「EQE」の2車種に、エンビジョンAESC製の電池を搭載する。メルセデスベンツ側もコメントを発表し、「エンビジョンAESCはわれわれの主要な電池サプライヤー(の1社)となり、アメリカでのEQシリーズの生産を支えてもらう」と期待を示した。

エンビジョングループは風力発電機で中国2位。車載電池には2019年、日本の日産自動車とNECなどの合弁会社だったオートモーティブエナジーサプライ(AESC)を買収して参入した。

AESCは、日産が2010年に鳴り物入りで発売したEV「リーフ」の初代モデルに電池を供給したことで知られている。しかし2016年、日産は電池事業からの撤退を表明。その後、紆余曲折を経てエンビジョングループがAESCの経営権を獲得した。

2025年に生産能力300GWh超目指す

調査会社のSNEリサーチのデータによれば、2021年に生産された新車へのエンビジョンAESC製電池の装着量は4.2GWh(ギガワット時)、電池メーカー別のランキングでは世界9位につける。

だが、装着量の前年比の増加率は7.7%と、わずか1桁の伸びにとどまった。寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)など、中国の上位メーカーの増加率は100%を超えており、大幅な出遅れが否めない。

本記事は「財新」の提供記事です

エンビジョンAESCは今後、猛烈な巻き返しを図る計画だ。同社のウェブサイトによれば、現時点の車載電池の生産能力は年間12.5GWh、供給先の自動車メーカーはルノー、日産、ホンダなどに限られている。

しかしメルセデスベンツからの受注を機に、アメリカで新工場の建設に着手。既存工場も増強し、2025年には全社の生産能力を年間300GWh超に引き上げる目標を掲げている。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は3月16日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT