「2030年冬季五輪招致」に前のめり札幌市の危機感 市の調査では「賛成」が過半数を占めたが…

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札幌五輪招致の既成事実化が進むなか、2030年度の新幹線札幌延伸と五輪開催を見越したかのような動きが各地で進んでいる。

まずは札幌市内で進む再開発ラッシュ。驚くことに現在30以上のビルや施設の建設が進んでいる。地下空間のリフレッシュや地下鉄駅のホーム増設なども進む。北海道新幹線札幌駅開業に向けて、南口には地上46階、高さ約245mのタワービルが建設され、ビル内にマリオットブランドのホテルができる。タワーは2029年秋に完成予定だ。

札幌は再開発の真っ最中(筆者撮影)

一方、北口にはマンション、ホテル、オフィス、店舗などからなる地上48階、高さ175mの複合型再開発ビルが建設中で、2023年末に竣工。すすきの地区でも「札幌すすきの駅前複合開発計画(仮称)」の工事が進み、2023年秋に開業する。

このような開発は札幌だけではない。市の大会概要案でアルペン競技開催が見込まれるニセコ地区では超高級ホテルなどの建設が進み、富良野にも外資参入の動きがみられる。外資による森林買収も後を絶たない。

さらに、民族共生象徴空間「ウポポイ」のある白老町(北海道中南部)には高級リゾートホテルが開業した。アフターコロナを見据えた動きが目白押しなのである。

札幌の活性化、北海道再生という地元政財界の悲願と新たなビジネスチャンスを狙う外資を含む投資家などの思惑が一致して「札幌五輪招致」が邁進しているかのようだ。

調査結果に驚く市民、先端的な街づくりを求める声

こうした状況を札幌市民はどう受け止めているのだろうか。市の意識調査の連絡がなかったという60代の男性の反応は冷ややかだ。

ニセコで建設中の高級ホテル。撮影は2021年夏(筆者撮影)

「昨年の東京五輪、今年の北京五輪と五輪開催のネガティブな側面が目立ちすぎ、その検証もきちんと行われていない状況では、やはり招致には反対せざるをえませんね。私の周りでは五輪招致はほとんど話題にもなりませんが、それにしても過半数が賛成という結果には驚きました」

今年の大雪で除雪作業の遅れに苦労した市民の間からは「五輪よりもほかにやるべきことがある」との声も聞かれる。

一方、「(今後の)札幌市の決定を尊重する」という女性は「五輪の是非を問わず、ゼロカーボンをキーワードに、公共施設の維持のあり方や自動車に過度に頼らない公共交通のあり方など抜本的な見直しが札幌市には必要だと思っています」と先端的な街づくりへの要望を語ってくれた。

冬季五輪招致に向けた動きは今後ますます過熱化、加速化していくと思われる。行政当局は1回だけの意識調査だけでなく、もっと広範に市民や道民の声を拾い上げ、合意形成への努力を重ねていく必要があるだろう。市民や道民は五輪招致を起爆剤とする街づくりビジョン、活性化構想を望んでいるのか、それとも別の構想を望んでいるのか。東京五輪の反省を踏まえ、慎重な検討が必要だろう。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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