「2030年冬季五輪招致」に前のめり札幌市の危機感 市の調査では「賛成」が過半数を占めたが…

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さて、ここからは札幌市の現状について見てみよう。北海道内で一極集中が続いてきた札幌市。住民基本台帳に基づく2022年1月1日の札幌市の人口(外国人を含む)は196万668人となり、1972年の政令指定都市移行後初めて減少に転じた。1972年といえば前回の札幌冬季五輪開催年である。五輪開催から50年後に人口減少局面が訪れたということだ。

札幌市の人口は1970年に100万人を突破して以降、道内各地から人々を吸引する形で増え続け、200万人目前にして失速した形だ。詳しく見ると、出生数低下に伴う自然減は2009年から続いている。また道外への転出では、直近データで見る限りでも2001年以降転出超過が続いている。つまり、道内各地からの転入超過による社会増で人口が増加してきていたのだが、ここへきてそのパイプも細くなってしまったというわけだ。

それもそのはず。北海道の人口も1月末現在で517万8000人と520万人を割り込んでしまった。前年同期から4万7000人減り、過去10年で最大の減少幅となった。道、札幌市ともに人口減少の厳しい局面にあるのだ。

コロナ禍で観光業に打撃

さらにコロナ禍の影響による観光打撃など北海道経済を取り巻く環境は厳しい。札幌市に限っても、2021年度下期市内企業の市内景況判断B.S.I(見通し)は▲22.6で、3期連続で上昇する見通しだが、コロナ前の▲11.2よりもはるかに低い。

百貨店・スーパー販売額など個人消費は持ち直してきているが、2021年の家計調査の名目消費支出は前年比11%減だ。有効求人倍率も1倍を割り込んだ状況が長期化し、今年1月は0.86(札幌圏)にとどまっている。

さらには1972年の冬季五輪時に建設された市内の公共インフラや商業施設、五輪関連施設の老朽化が進んでいる。前回五輪開催から50年、今年8月に市制100周年という節目を迎える札幌にとっては大きな転換期でもあるのだ。

人口減と経済縮小が同時進行という状況について、秋元市長は札幌市の五輪招致サイト内でのインタビューでも触れている。

「(人口減少局面では)外貨を稼ぐことが必要。札幌は雪や自然環境という大きな財産がある。そういったものを世界に発信して、外から稼ぐきっかけにしていければと思う」などと語っている。人口減少、経済縮小局面に突入したなかで、五輪を契機に札幌の活性化を図りたいということだ。

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