データが示す「日本の不妊治療」知られざる実態 不妊治療の「平均回数」や「年齢別の妊娠率」とは

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体外受精などによる子どもが増加している背景として、女性の社会進出に伴う晩婚・晩産化がよく知られているところです。加えて、食生活などの変化によって体格が良くなり、初潮年齢が低年齢化している一方で、出産回数が減少していることで、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が増えているとも指摘されています。

また晩婚化によって、第一子出産年齢は2019年に平均30.7歳、第二子出産年齢は平均32.7歳と、いずれも10年前と比べて1歳上昇し、過去最高水準となっています。40歳以上での出産割合は2010年には8.3%でしたが、2019年には12.0%にまで上昇しています(厚生労働省「人口動態統計(2019年)」)。

では、不妊治療を受ける人の年齢は何歳が最も多いのでしょうか。

不妊治療はこれまで自由診療だったため公的な統計が限られており、治療者の年齢構成はわかりませんが、2020年度の不妊治療助成金事業の利用者の年齢分布で見ると、39歳がピークとなっています。

また、2019年の体外受精や顕微授精による出産時の女性(母親)の年齢は、75%が30歳代、17%が40歳代、8%が20歳代となっています(日本産科婦人科学会「ARTデータブック2019年版」)。

妊娠率・出産率は「33歳ごろ」から低下

4月以降、保険診療を受けるには年齢制限が設けられています(治療開始時において女性の年齢が43歳未満であること、今年9月末までの経過措置あり。詳しくは厚生労働省HP参照)。厚労省はこの理由の1つとして、「妊娠・出産に伴うリスクが相対的に少ない年齢、また、治療を行った場合に、出産に至る確率のより高い年齢に、必要な治療を受け、妊娠・出産の希望を叶えるため」を挙げています。

ここでいう「出産に至る確率の高い年齢」は何歳を指すのでしょうか。

日本産科婦人科学会の「ARTデータブック2019年版」によると、体外受精・顕微授精の場合、妊娠率と出産率は33歳ごろから低下しはじめます。一方、流産率は30歳ころから上昇しはじめ、30歳では6回に1回以下だった流産率が40歳で3回に1回になり、今回の保険適用の対象外となる43歳では2回に1回となっています。

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