実は「冷戦後で最悪」アメリカとロシア因縁の関係 国家の威信をかけた覇権争いはどうなるか

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北極海ルートはアジアと欧州を最短で結ぶルートであるため、従来の物流を大きく変えるものとして期待されています。日本においては北海道が北極海ルートの「アジアの玄関口」になるため、その地理的な優位性を地域経済に生かそうとする取り組みが始まっています。

2010年、中国の名目GDP(国内総生産)が日本を抜き、アメリカに次ぐ世界第2位となりました。

この時、アメリカのGDP約14.9兆ドルに対して、中国は半分以下の約5.9兆ドルでしたが、2020年にはアメリカの約21兆ドルに対して、中国は約15兆ドルと差を縮めており、2030年までにアメリカを抜くという予測もあります。

こうした中、対中貿易赤字の解消を掲げるアメリカのトランプ大統領は2018年、知的財産権の侵害などを理由に、中国に対する制裁関税を発動。中国が報復関税を実施したことで、米中貿易摩擦が過熱しました。2021年に就任したバイデン米大統領も強硬姿勢を崩さず、貿易摩擦は近年「米中新冷戦」とも呼ばれています。

ところで、地政学には、ナンバー1の国は、その地位を維持するためにナンバー3以下と連携し、ナンバー2を潰そうとする「バランス・オブ・パワー」(勢力均衡)という考え方が存在しています。冷戦時代、ソ連と敵対していたアメリカは、日本と手を組んでソ連に対抗しました。

一方、近年のアメリカは、世界2位の大国となった中国を、日本を含む西側諸国と連携して牽制しているのです。

米中対立のそもそもの原因は、アメリカの対中貿易における大幅な貿易赤字にありました。そのため、トランプ政権時代のアメリカは中国からの輸入品に関税をかけて対抗。貿易摩擦にまで発展したのです。

その後、米中対立は単なる貿易摩擦を超えて、ファーウェイ問題などのI T競争や南シナ海のシーレーンを巡る軍事対立に見られるように、国家の威信をかけた覇権争いの様相を呈しています。

「人殺し」と呼ばれたプーチン大統領

2014年にアメリカは、ウクライナに軍事介入したロシアへの経済制裁をEU(欧州連合)と日本に呼びかけ、ともに発動。G8(主要8ヵ国)の枠組みからロシアを外しました。制裁は当初、個人や企業に対する資産凍結や入国制限に限られていましたが、ウクライナ東部紛争への干渉などを理由に強化され、ロシアの基幹産業である石油産業にも及んでいます。

しかし、ウクライナへのクリミア返還を求めるアメリカに対してロシアは一歩も引かず、両国関係は悪化の一途を辿ります。さらにアメリカは、ロシアによるアメリカ大統領選挙への介入(情報工作)疑惑、ロシア系ハッカー集団によるアメリカのインフラ施設・企業に対するサイバー攻撃、毒殺未遂に遭ったロシアの反政権活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏の拘束などについてロシアに強く抗議。

2021年3月にはバイデン大統領がテレビ番組で「プーチンを人殺しだと思うか」と問われ、「そう思う」と答えるなど、米ロ関係は〝冷戦後最悪〞となりました。

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