実は子どもの死因「不慮の死」長年上位の衝撃実態 原因がわかれば予防できるのに情報取得を阻む壁

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小児科医でもある自見議員がCDRと出合ったのは、東京大学医学部に入局したころだったという。手伝った研究がCDRにつながる内容だった。

決定的だったのは、その後、一般社団法人「吉川慎之介記念基金」代表理事の吉川優子さん(50)と出会ったことだ。吉川さんは2012年7月、私立幼稚園に通っていた5歳の息子を川の事故で亡くし、その後は水難事故予防の活動を続けている。

自見議員にしてみれば、吉川さんは極めて良識的な人だった。

「普通の立派なお母さんが、自分の子どもが突然亡くなって、『なぜ子どもが死んだのか知りたい』と言っているのに、そのシンプルな問いに社会が答えられていなかった」

激烈な縦割りでたらい回しに遭っていた

当時は、0~6歳の子どもを主に対象とした「教育・保育施設等における事故報告集計」(内閣府取りまとめ)もなかった。

「激烈な縦割りだったんです。今でこそ内閣府が取りまとめて、ゼロロク(0~6歳)の子どもの事故については、必ず自治体をかませて、たらい回しがないようにすることができています。けど、吉川さんのときはそういう仕組みもない。私立幼稚園は文科省だと言うので文科省に問い合わせたら、それは自治体だと言われて、自治体に行くと、それは文科省だって……。吉川さん、もう、とにかく、たらい回しに遭っているんです。自分の子どもの死因究明で」

吉川さんのそうした話は、聞くだけでとにかくつらかったという。

「一人っ子の男の子を亡くしているから、もう自分に子どもはいないんですよ。子どもが亡くなったというだけで、吉川さん、とてもつらいのに、それ以上のつらさと苦しみを与えているわけですよ、社会の仕組みが。正直、なんてひどい国なんだと思って。グリーフケアするならまだしも、『遺族のお母さんにこんな思いさせる国って何なの!』って思ったのが最初ですね」

1期目だった自見議員は、吉川さんからたらい回しの話を聞いた後、すぐに関係省庁の担当者を呼んだ。文科省、内閣府、法務省、警察庁……。ところが、いずれの担当者も「自分の所管じゃない」と言い出した。

「子どもが1人死んで、 お母さんもこんなに苦しんでるのに、よく関係ないって言いますね、と無茶苦茶怒ったんですよ。でも、その怒りは私が新人だったから。その後、議員活動をしていて、わかったんです。行政というのは法律を基にして動く。でもCDRは法律がない。だから、彼らがいかに使命感を持っていても、やりようがない。担当者も気の毒だなと」

オンラインで講演する吉川優子さん(撮影:穐吉洋子)
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