「オッドタクシー」に見る制作会社が生き残る道 「下請け」から脱却することが生き残る条件

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相談した此元和津也氏が仕上げた脚本が本当に面白く、実現すべく平賀氏は奔走した。

タクシードライバーを憎む警官の大門兄弟(ミーアキャット)、声優はミキの昴生と亜生(©P.I.C.S. / 映画小戸川交通パートナーズ 配給:アスミック・エース)

「当初は自分たちでTVアニメを作れる気でいました。でも企画書を持ってあちこち回ると‟これ、アニメ制作はどこがやるんですか”と聞かれて。なるほどと思いました。監督は初監督作、此元さんは漫画家としては有名でしたがアニメシリーズの脚本家としては初めて。もちろんP.I.C.S.はTVアニメを作ったことはない。確かにほかの会社から見れば不安だろうなと思いました。中身としては絶対面白いとみなさん言ってくれていたので、同じグループのOLMに相談しました」(平賀氏)

グループ会社だから当然に思えて、実はOLMの参加にはワンステップあったのも面白い。逆にOLMの紹介でテレビ東京も参加し、2021年4月からの深夜帯でのTVシリーズとして話がまとまった。

徐々にSNSなどで広がっていった

放送直後にAmazon Prime Videoでも配信したら、最終回の放送後から徐々に話題がSNSなどで広がっていった。規模はずいぶん違うが、放送と配信で話題が広がったのは「鬼滅の刃」と同じ構造だ。配給会社アスミック・エースから映画化の打診もあり、今年4月の映画公開に至った。

実は筆者は昨年秋になって配信で一気見し、すぐに映画化を知った。テレビ版の最終話がいかにも続きがありそうだったせいもあり、最初から映画化が決まっていたのかと思ったのだがそうではなかったという。

「映画化という大きなチャンスに、脚本の此元和津也さんにムチャをお願いしました。最終話のラストのあとも映画で描いてテレビシリーズを見た人たちも楽しませつつ、初見の人も楽しめる映画の構成を考えましょう、と。そんなもんできるか!と此元さんは心の中で思ったらしいんですけど、やってみましょうということで動き出しました」(平賀氏)

いかにも続きがありそうだったラストの、続きを本当に描きつつ、そこに至る物語も違った視点で語る。そんな平賀氏のムチャぶりに見事に応えた此元氏が、テレビ版を見た人も見てない人も楽しめる物語を構築している。ついたサブタイトルが「イン・ザ・ウッズ」、芥川龍之介の「藪の中」の英語訳だという。

「いろんな人たちの証言、語られなかった裏側や本心を軸にTVシリーズを振り返る、答え合わせのような仕組みです。初見の人はTVシリーズを全部振り返れるし、見た人からすると、各登場人物から新しい情報を得てまた見方が変わるようなものを目指して作っています」(平賀氏)

テレビ版から映画版に移行する際の物語の作り方として、今後大いに参考にされそうな手法だ。「オッドタクシー」のTVシリーズの立ち上げ方から映画版への展開まで、コンテンツビジネスのお手本になる聞き応えのある話だった。

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