英断?愚策?岸田首相「まん延防止」解除で大博打 早期に第7波が来れば、参院選で自民ピンチに

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今回の岸田首相の全面解除決断は、その後の各種世論調査でも6割前後の高い支持を得ている。国民の圧倒的多数が「これ以上我慢は続けられない」と考えていることが、全面解除を歓迎する世論を形成したことは間違いない。

さらに、第3次世界大戦にもつながりかねないウクライナ危機への国民の恐怖感が、コロナも含めた政府の対応への関心を薄めたのも否定できない。世論調査でも、岸田首相がG7の一員として日本への返り血も覚悟でのロシアへの経済制裁に踏み込んだことで、内閣支持率が再上昇している。

この状況を、「昨年10月の政権発足以来続く岸田首相の運の強さ」(自民長老)とみる向きも多い。確かにウクライナ危機の中、通常国会前半戦の最優先課題だった2022年度政府予算案も、3月22日にすんなり成立し、コロナ対応や政権スキャンダルでの野党各党の追及も、腰砕けに終わった。

ウクライナ危機での首脳外交に精力的だが…

政権運営への自信を深める岸田首相は、全面解除の決断後、ウクライナ危機での首脳外交に挑んでいる。まず、19日にロシアと関係の深いインドを訪問。モディ首相との首脳会談で「ロシアへの戦闘の即時停止要求」で一致するなど一定の成果を挙げた。

さらに、22日の予算成立を受け、翌23日夕に行われるウクライナのゼレンスキー大統領の国会演説直後にベルギーに向け出発。24日からのG7首脳会議に出席、対面での協議で「欧米とアジアの橋渡し役をアピールする」(外務省筋)ことになる。

こうした岸田流首脳外交も国民の支持拡大を狙ったもので、表情にも「自信と余裕」(側近)がにじむ。政府と自民党が連携しての国民民主や連合の取り込みで、「野党の分断にも成功した」(自民幹部)。それにより「このままなら参院選は負けようがない状況」(自民選対)との見方が支配的だ。

ただ、感染症専門家の多くは、「東京も含めて新規感染者数の全国的に高止まりが続く中での全面解除は、早期の感染爆発につながる」(対策本部専門家)と危機感を隠さない。「年度末や4月末からのゴールデンウィークで全国的に人の動きが活発になれば、すぐ、全国の新規感染者は数万人レベルになる」(同)という分析だ。

首相サイドは「まん延防止の再適用はしない方針」(周辺)とされるが、その場合、国民の不安や不信が政府批判につながることは避けられそうもない。このため、自民党内でも「今回の首相の大博打」(幹部)が早期の第7波襲来を招けば、「参院選での与党改選過半数割れという敗北」(同)にもつながりかねないとの声も少なくない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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