英断?愚策?岸田首相「まん延防止」解除で大博打 早期に第7波が来れば、参院選で自民ピンチに

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全面解除の正式決定は、岸田首相の決断後の3月17日夜の政府対策本部。これまで同様の持ち回り形式の協議で、1月上旬以降最大36都道府県に適用された重点措置について、2カ月半で終止符を打つことを最終確認した。

表舞台での全面解除への経緯をみる限り、岸田首相の決断は「自然な成り行き」(官邸筋)ではある。政府は当初、オミクロン株感染爆発と3回目ワクチン接種の大幅遅れで厳しい後手批判を受けたが、3月に入って新規感染者数や死者・重症者の減少が進んで国民の警戒感が薄れ、批判も沈静化していたからだ。

しかも、2月24日に勃発したロシアのウクライナ軍事侵攻が、「政府のコロナ対応の迷走への国民の批判を帳消しにした」(官邸筋)ことも否定できない。首相サイドも「パンデミックを上回る国難で、コロナ対応批判が消えた」(側近)と苦笑する。

ただ、全面解除への経過をみると、政府は事前に専門家会議で解除条件の大幅緩和を決めている。「解除ありきで環境整備を進めてきた」(閣僚経験者)としかみえない。しかも、その中で最後まで不透明だった大阪との協議に「首相のしたたかな戦略が垣間見えた」(閣僚経験者)との指摘もある。

吉村氏に「政局的な揺さぶりをかけた」との見方も

そもそも、大阪の対応が注目されたのは、医療崩壊の指標ともなる重症者数や死者数で「大阪が圧倒的ワーストワン」(感染症専門家)だったからだ。大阪府・市の最高責任者の吉村洋文知事と松井一郎市長は、国政政党・日本維新の会の副代表と代表で、特に吉村氏はコロナ対応で「大阪モデル」を掲げたことで、全国的にも支持、評価されてきた政治家だ。

このため今回、大阪だけ重点措置適用の延長対象となれば、「大阪コンビのコロナ対応の失敗が表面化」(自民幹部)して、維新への批判拡大も確実視される状況だった。与党内では「そこに目を付けた首相が、吉村氏らに意思表示を迫ることで、政局的な揺さぶりをかけた」(公明幹部)とのうがった見方も広がった。

これに対し吉村氏は、タイムリミットぎりぎりの段階で「こちらから延長申請はしない」と、政府に下駄を預ける対応で交わそうとした。しかし、記者会見での説明には従来の歯切れよさは見られず、結果的に「首相の狡猾な揺さぶりに、自ら土俵を割った」(自民長老)ようにもみえた。

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