人工地震を信じる人々が映す「陰謀論」深刻な浸透 「情報の民主化」は「偽情報の民主化」でもある

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3月16日深夜、東北地方を襲った最大震度6強の地震によって崩れ落ちた民家(写真:新華社/アフロ)

3月16日深夜に福島県沖を震源とする地震が発生し、宮城県と福島県で震度6強の揺れを観測。関東地方では東京都を中心に200万軒を超える停電などが起こった。

ネット上では、東日本大震災追悼のタイミングに近かったこともあり、「人工地震」「地震兵器」などを疑うデマが大量に流れた。Twitterでも例のごとく「人工地震」がトレンド入りし、ウクライナ侵攻を反映してかロシア犯人説などを唱えるアカウントも目立った。

ここ数年大きな地震が起こる度に人為的なものではないかとの投稿が相次ぐようになっており、翌17日にはNHKが「人工地震ではない」と解説する東京大学地震研究所の専門家のコメントを紹介するほどだった。

地震をめぐる陰謀論の歴史

同種の陰謀論は、1995年の阪神・淡路大震災から囁かれているものだが、2011年の東日本大震災を契機に一般の人々にも広がった。大陸プレートで核爆発を起こし、人工的に巨大地震を発生させ、日本に壊滅的な被害をもたらしたという陰謀論で、アメリカやイスラエルの関与など諸説が出回った。コロナ禍以降、ウイルスの起源などをめぐって生物兵器説が急速に浸透したのとよく似ている。なぜこのような荒唐無稽なデマを信じてしまうのか。

まず、以下に引用する文章を注意して読んでもらいたい。

出所はどこかわからないが、あの大地震大火災で、下町一帯火の海と化した最中に、大塚警察に飛び込んできた一壮漢!
『この大地震は西洋で起こしたんだそうですが、ほんとですか!?』
『なに?』といったが、巡査はなんのことか意味がわからない。
『チエッ! さとりの悪いおまわりさんだな、この地震は、こんど西洋で地震を起こす機械を発明して、日本を真っ先にやっつけようとしたんだっていうことですが、ほんとうにそうなんですか? 警察のほうへはまだ宣戦の詔勅の通知はありませんか!?』と息せききってたずねる。
これにはさすがの巡査も返答のしようがなかったそうだが、つづいて五、六人もこれと同じ質問を警察へ持ち込んだ人があったので、巡査君ボウッとしてしまい、『ハテナ、これはひょっとするとそういう新発見が事実あったのかナ? おれが時勢におくれているのかナ?』と思ったそうだ。(今井清一編『日本の百年6 震災にゆらぐ』ちくま学芸文庫)。
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