脳震とう問題あった大相撲「土俵は危険」説の実際 安全面への対策は進むものの対策はまだ不十分

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正代に押し出しで破れ土俵下に落下する宇良(右)(2022年1月10日撮影)(写真:日刊スポーツ)

大相撲春場所が13日に初日を迎える。本場所を前に、1月の初場所でヒヤリとした場面を振り返り、検証してみたい。

初場所2日目、東前頭2枚目の宇良が脳振とうのような症状になった。大関正代に押し出されそうになったところで、正代の左腕をたぐり、土俵下に落ちた。後頭部を強く打ち付け、衝撃音が響いた。

正代が手を貸そうとしたが、宇良は自力で土俵に戻った。しかし、足どりはフラフラ。宇良は呼び出し2人の手を借りて土俵を下り、車いすに乗って花道を引き揚げた。

当欄では以下の点について検証する。

(1)宇良を自力で土俵に戻したのはなぜか

(2)宇良の取り口は危ないのか

(3)土俵は危険な場所なのか

(4)安全対策は十分か

(5)改善策はあるのか

審判に入っていた親方の証言

(1)宇良を自力で土俵に戻したのはなぜか

宇良は土俵から落ちて後頭部を打ち、しばらく動けなかった。安全上、動かさない方がよさそうにも見えたが、宇良は自ら起き上がった。土俵に上がったが、フラフラしてまっすぐに立てなかった。映像を見る限りでは、なぜ止めなかったのか疑問に思えたが、事情を聴いて現場の様子が初めて分かった。

あの時、審判に入っていた親方の1人はこう証言した。

「藤島審判長(元大関武双山)が宇良に『動くな。そのまま、そのまま』と言ったけど、宇良が『大丈夫です』と言って土俵に上がってしまった。頑張らなくていいところなのですが、本能的に上がってしまい、審判の指示を振り切ってしまった。事情を知らない人には、審判が土俵に上げたように見えたかもしれませんが、現場はこういう事情だったのです」

次ページ映像を見直すと…
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